水風呂への道

 「このまえは歩きだったから地図を見ながら行けたけど。それに10キロの距離を自転車で走ったこと、ある?ぼくは、ないよ。経験がないから言うわけではないけれど、走り切る自信もない……帰り道も10キロ走るんだからね」隆之介りゅうのすけが言った。

「おれもないな」れんも言った。

「おれも……悠斗はるとは?」

「ぼくも、ない」

このまえ3キロ歩いた時も、そこそこ疲れたというのにその3倍。

考えただけで気が遠くなってしまう。

でも水風呂……すっごく入ってみたい。

「そういう施設だったら、HPホームページとかもあるだろうし。今夜にでもPCパソコンで調べてみるよ」隆之介が言った。

「そんな面白そうな場所、知ったのに行けないなんてつまらないからね。なんとかして行き方を考えてみるよ」

 

 翌日。

ぼくたちは隆之介の家に集まった。

最初はいつもの公園に集合したんだけど、邪魔が入ったらいやだからという理由で、隆之介が自分の部屋を提供してくれたんだ。

もちろん“親の許可はもらってる”らしいけど。

「おじゃましまーす」

玄関のところまでは来ることがあっても、中に入るのは久しぶりだ。

「適当に座ってて」

隆之介はぼくたちを部屋に案内すると、ドアから出て行った。

「すげーなあ。本ばっか」智生ともきが部屋の中を見回して感心したように言った。

「マンガとか持ってないのかよ?っていうか、これりゅう専用のPCかよ。すげぇ」

智生の言葉じゃないけど、ほんとに本がずらっと並んでいる。

おばあちゃんの本棚よりは少ないけれど、それでもぼくよりたくさんの本を読んでいるみたいだ。

「マンガは、別の部屋に置いてあるよ。とうさんやかあさんが買ってるのを読ませてもらってる」

ペットボトルの麦茶が4本乗ったトレイを手にして、隆之介が部屋に戻ってきた。

 

 冷えた麦茶を飲みながら隆之介は説明を始めた。

「まず行く方法なんだけど、平日と土曜は市営バスで行けるみたいなんだ。ただ、土曜日は蓮が無理だから除外して。平日は1時間に1本あるかないかで運賃が片道150円。施設の利用料が200円だから合計で500円。高いと感じるか安いと感じるかは個人によるけどね。どう?」

「500円。マンガ一冊分か……」

「智生、またマンガかよ?」蓮が突っ込んだ。

「だっておれに一番身近なものなんだもん。まあ安くはないけど大丈夫」

500円。

そのくらいだったら、お年玉の残りもあるから大丈夫そう。

「おれは、大丈夫かな」蓮も言った。

「ぼくも」

「じゃあ、お金の面は解決だね。あと……やっぱり家の人の許可はもらっておいたがいいと思う。少なくとも行く日にちと場所は言っておかないとね。ほんとはだれか大人に一緒に来てもらうのが一番なんだけど」

 

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