次の謎 4

 「悠斗はるとのばあちゃんって、ぶっとんでるな!」

週が明けた火曜日、公園で週末のことをみんなに話したら開口一番に智生ともきが言った。

隆之介りゅうのすけれんも肩を震わせている。

「もう!笑うならちゃんと笑ってよ!!」

ぼくがそう言うと、三人ともおなかを抱えて笑いだした。

すっごく笑うから、最初はばかにされているようで面白くなかったけど、みんなが笑う姿みてたらなんだかおかしくなって、ぼくもいっしょに笑ってしまった。

「でもさ、悠斗は広い意味では末裔なんじゃない?」やっと笑いがおさまったらしい隆之介が言った。

「なんで?」

「だってさ、悠斗の家っておかあさんの血筋はずっと豊入とよいり市に住んでいたんでしょ?」

 

 そう。

前に授業で『自分の根っこルーツを知ろう』っていうのをやったんだ。

両親の出身地(県だったり、その次にくる市とか郡ね)、おじいちゃんおばあちゃんの出身地、そしてわかるならばひいおじいちゃんやひいおばあちゃんの出身地を家の人に聞いてこようっていう宿題が出たんだ。

そして自分を花にたとえて、その根っこがどんなふうに広がっているかを絵にしようっていう内容だった。

先生が説明してくれた書き方は、こんな感じだった。

「まず自分を花で書きます。花の色は……青で塗ろうか。ほかの色が好きな子もいるだろうけど、今日は我慢してね。そして角度をつけた2本の線を引いて……角度は90度くらいでいいよ。そしてそれぞれの先に○を書く。この丸はお父さんとお母さんね。君たちのお父さんとお母さんがここ豊入市の出身なら青で、それ以外なら赤で塗る。おじいちゃんやおばあちゃんも同じように線と○を書いて塗ってみて。もしもわかるなら、ひいおじいちゃんとか、それより前の人たちもね」

書きあがってから順番に発表したんだけど、ほとんどのクラスメイトがおじいちゃん・おばあちゃんどまりで……それより前はわからなかったり、親戚のだれも覚えてないってことだったんだ。

塗ってある色も、青よりも赤の方が多い感じだった。

お父さんとお母さんのどちらも赤っていう人もいたし。

そんな中ぼくのママは、おばあちゃんはもちろんおじいちゃんも青だったし、その前にさかのぼっても少なくともどちらか片方は青が続いていた。

「あら……先祖代々ずっと豊入市って、高橋くんだけ?それはそれですごいことだわ」

先生がそう言った。

たまたま資料が残ってたというのもあったけど、なんとひいひいひいひいひいおじいちゃんも豊入市の人だったらしいんだ。

もちろんその頃は違う地名……豊能とよの村って言ってたっけ……だったらしいけど。

 

 「たしかに、ずっとここの市に住んでるけど。それがどうして“広い意味の末裔”につながるの?」

「天狗さんは、この地域の生まれだったんでしょ?ということは両親がいたわけ」

「うん。そうじゃなかったら生まれてないもん」

「天狗さんは結婚してないらしいから直接の子供はいないけど、天狗さんには兄弟がいたんじゃない?その人たちが結婚して子供ができたら、ができるよね?」

「それは、そうかもしれないけれど。だからってぼくが末裔ってことにはならないんじゃない?」

「昔は、今みたいに自由に移動できなかったというからね。だから悠斗のご先祖様みたいにほぼ江戸時代にこの地域にいたということは、その前からもこの地域にいた可能性が高いんだ。それこそ、いつかはわからないけれど天狗さんが生まれたころからいたかもね。そして悠斗のご先祖様の誰かと天狗さんの近親者の子孫の人が結婚したかもしれない。まあ、こうなると末裔というより血筋と言った感じだけど」 

 


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