次の謎 3

 【いま、探しておるのがということを、ぬしは失念しておるようじゃの?】

天狗さん……なんだか『やれやれ』って思ってる?

探してるのは天狗さんの分身だって、忘れるはずないじゃない。

分身……え?もしかして。

「もしかして、天狗さんってば分身さんと会話したの?」

分身って、づけで呼んでいいものだっけ??

【しゃべってはおらぬ。頭以外に口はないのでな。以前、わしと残りの部分とは相通ずるものがあって、近づくと共鳴するようになっておると言うたと思うが。あの場でひとつになるまで、その気配が『足』とはわからなんだが、わしの一部があるということだけは感じておった】

「へえ、そうなんだ」

そんなことって、ほんとにあるんだ。

波長とか気配とか目に見えないものだけど、実際に玉の中の天狗さんには足が戻ってきているわけで。

 

 「ねえ。その気配?波長?で、残りの……両手がどこにあるかを探すことはできないの?」

【さすがに、それはできぬ。わしが居る場所の周囲わずかな範囲であれば探ることは可能じゃが、あまり広くなるとわしの意識が薄まるので、あったとしても察知できぬのじゃろう】

「ふうん……。あ、そういえばぼくの波長はよくわかるって言ってたでしょ?」

【うむ】

「じゃあ、ぼくが天狗さんを見つけるまでに誰かの波長を感じたことはなかったの?」

【あるにはあったが、むこうがわしに気づかなんだ。ほんの足元におっても知らぬまま行ってしまう者もおったな】

だとしたら、ぼくが気がついたのは、ほんとにおばあちゃんが言うように波長が合ったからなのかな?

 

 「まあ、人間同士でも合う合わないってあるからね。悠斗はるとにもそういう人いない?すごく気が合う人とか、その逆でどうしても仲良くしたいと思えない人とか」

「……いる」

ぼくはクラスメイトのひとりの顔を思い出していた。

別に悪いやつだとは思わないけど、どうしてだか仲良くしたいと思えない。

人の好き嫌いがはっきりしている隆之介りゅうのすけなんかは、あからさまに冷たい態度をとってるけど。

「あら、悠斗でも苦手な人っているんだ?」

「そりゃ、ね。嫌いってわけではないんだけど」

「そう。まあ、そういう相手がいてもいいとは思うわよ。すべての人と仲良くできる人なんていないしね。ところで、天狗さんと悠斗が出会ったのは波長が合って惹きあったっていうの、設定としてはおもしろいわね。ううん、いっそ血が呼び合ったというほうがおもしろいかも。ふふふ、『天狗と出会った私の孫は、実は天狗の末裔だった!』なんて小説書いたら楽しいかもしれないわね。今のラノベみたいで」

「お、おばあちゃん?!」

、でしょ」

……末裔の意味は、あとから辞書で調べた。

おばあちゃん……よくそんなこと思いつくよね。

 





 






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