石窟 2
落ちてくる水の量が少ないのでしばらく待ち、ようやくひしゃくの半分までたまった水を飲んでみた。
……ふつうの水。
でも暑かったから、それはそれで美味しく感じた。
「さて……と。この場合どっちのわき水になるんだろう?」
「井戸のときは一ヶ所だったから探さなくてよかったけれど、ここは二ヶ所でわいてるし。あと、もしあった時にまぶしく光るとしたら、他の人はいないほうがいいよなぁ」
「ねえ、あるかどうか、あるとしたらどこかは天狗さんに聞いたが早いかもよ?」ぼくはそう言って玉を取り出した。
「ああ、確かに。それが一番確実だね」
取り出した玉は、この前と同じようにうっすらと光って見えた。
「ねえ、天狗さん」
【何じゃ?】
「今日来ているわき水のところって、天狗さんの分身はいるのかな?」
【しばし、待っておれ。探ってみよう】
玉の光が少し強まったように感じた。
むこうでわき水を飲んだらしい
「あ、天狗さんの分身って見つかった?」智生が聞いてきた。
「ううん、まだ。わき水が二か所あるでしょ?どっちかわからないから天狗さんに聞いてるとこ」
「ふうん……あ、ほんとに前に見たときよりも光ってる感じがする」
「智生にもそう見えるんだね」
【小僧よ、もうちぃとばかり移動してもらえぬか?】
「え、あ、どっちのほうに行ったらいいの?」
【この場所のほかに、もう一か所水がわいておる場所があろう?】
「うん」
【そちら側へ移動してくれぬか】
「わかった」
ぼくは玉を持ったまま、ふたつのわき水の中間あたりまで進んだ。
【ここじゃ】
「ここ?」
【ここで、わしを持った手を上へとあげてくれぬか】
「こんな、感じ?」
ぼくは玉を落ちないように両手で包むように持って、上へと伸ばした。
パアアアアアアアアアアッ
まぶしい光がぼくたちを包み込んだ。
「わあっ!」
前回で経験してたはずなのに、まぶしくてつい声を出してしまった。
隆之介たちは初めてだったから、もっとびっくりしたと思う。
でも、まぶしかったのはほんの一瞬で、あたりはすぐに元通りの明るさに戻っていた。
「天狗さん、どう?」
【ふむ。ここには足があったようじゃの】
おそるおそる玉をのぞきこんでみた。
「あ、足が両方とも戻ってる!?」
玉の中には、頭と身体、そして両足を取り戻した天狗さんの姿があった。
玉の光も強くなった気がするし、なによりまた大きくなってない?
「天狗さん、どうだって?」隆之介が聞いてきた。
「あ、ここには足があったみたい。それも両方とも」
ほら、と隆之介に玉を手渡した。
「ほんとだ」
「おれにも見せて」智生が手を出す。
「今度は、いらないこと言うなよ」隆之介が釘を刺しながら智生に渡した。
どれどれ……とのぞきこんだ智生が言った。
「だるまの次は……コケシ?」
続
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