挑戦 8

 目の前に立っている建物は、やっぱりお堂のようだった。

お堂の近くに立っていた案内板を読んでいた隆之介りゅうのすけが、ぼくたちのところに戻ってきて言った。

「ここにある観音像って、なんだかすごく古くてがあるらしいよ」

「へえ、どんな像なんだろう?見てみたいなっていうか、どこにあるんだ?」智生ともきが言った。

ぼくたちは、周りをきょろきょろと見回してみた。

でも、それらしい像なんてどこにも見当たらなかった。

「すごく古いっていうなら、建物の中にいれてあるんじゃねえ?」れんが言った。

「そうかもね……その可能性は高いかも。行き方にばかり気をとられて、敷地の中がどんな感じなのか、なにがあるのか調べるの忘れてた。ごめん。観音像のことも,とうさんに聞いてたはずなのに」隆之介が言った。

「そんなことないよ。道順を調べてくれただけで、すごくありがたいよ。自転車を置く場所だって頼んでくれたんだし」ぼくも言った。

「そうそう。その観音像ってやつ、ここにあるのは間違いないんだろ?だったら改めて見に来ればいいんじゃね?」智生も言った。

「観音像を見に行くって理由があれば、ここまで自転車で来る許可がもらいやす……ああっ!その手があったんだ。今日もそういうことにしておけばよかったんじゃ?」

 

 「それは結果論。観音像は、今日ここに来た理由から見たらみたいなものだからね。だいたい、ぼくたち小学生が観音像に興味があるって言っても、なかなか信じてもらえないと思うよ」隆之介が言った。

たしかに“霊水に興味がある”のほうが信じてもらいやすいかも。

許可するかしないかは別問題としてね。

「それで、どこにか探さなきゃいけないんだけど。悠斗、この前の井戸の時はどうやって探したの?」

「この前は、特に探してないんだ」

「そうなの?」

「うん。井戸があるって聞いたでしょ?それで神社に行って、井戸の場所に着いて。それで、どうやったら天狗さんの分身を探せるんだろう?と思ったのね」

「うん……それで?」

「とりあえず玉をポケットから取り出してみたら、ちょっとだけ光っているような気がしたんだ。それで、玉を持ったまま井戸に近づいたら、とつぜんパアッッて」

「光に包まれた……と」

「そうなんだ。だから特に探したりはしなかった」

 

 ぼくと隆之介の会話を、蓮と智生も興味深そうに聞いていた。

「それってさ」蓮が言った。

「お互いがひきつけあうっていうやつじゃないか?もともとは同じひとつの身体だったんだからさ」

「そうかもしれないね……だとしたら一番可能性があるのは、やっぱりわき水のそばか」隆之介が言った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る