挑戦 6
「ねえ、あのお店のおばさんって知ってる人?」ぼくは
「いいや、全然知らない人」
「ええ!知らない人なのに、自転車のこと頼みに行ってくれたの?」
「うん。だって、適当な場所に置いていたら放置自転車って思われるかもしれないし。行き方を調べてたら、ちょうど良さそうなところに店があったからね。かあさんに連れていってもらって頼んだんだ。ちなみに宿題って言ったのは、かあさんだよ」
「ありがとう……って、
「ん?みんなでわき水を見に行きたいって。霊水って聞いた友だちも見に行きたがってるけど、自転車では行きづらい人がいるからみんなで歩いていくことにしたって言ったら手伝ってくれたんだ。まあ、『どうせまたなにかやるんでしょ?』と思っているとは思うけど」クスクスと笑いながら言った。
「隆のかあさんって、すげえな」蓮が言った。
「おれんちだったら、そんなところに何しに行くの?そんなことして何か意味があるの?って言われるよな。もしくは、行けない子は連れて行かなくていいじゃない。かわりに直を連れて行ってあげなさいよ、お兄ちゃんでしょって言われる」蓮がうらやましそうに言った。
「うわあ、それってイヤかも。おれんちだったら……それってほんとに宿題なの?口実にして遊びに行きたいだけなんじゃないの!って言いそう」智生も言った。
「そう?べつにすごくなんてないと思うけど。ぼくのかあさん……とうさんもだけど“なんでも、やりたいようにやりなさい”って教育方針なんだ。知りたいことを知り、やりたいことをやる。ただしうそをつくことと、だれかに迷惑をかけることは絶対不可」
……確かに。
お店の人に頼みに行く時も天狗さんのことを伏せてるだけで、あとはほんとのことしか言ってない。
「隆って、家の人に信用されてるんだね。ぼくだったら『まだ子どもなんだから、親の言うことを聞きなさい』で済まされそう」
「信用とか、そういうわけではないと思うけど」隆之介が言った。
「子どもの育て方とか教育方針とか、その家それぞれだし。親の性格によっても変わると思うよ。たまたまぼくのとこは両親揃って“自分のことは自分で”派だからね。必要なお金とアドバイスはくれるけど、あとは“自分で考えて行動しなさい”だよ。あ、あの点滅信号のところを曲がるみたい」
自分で考えて行動?……ぼくにそんなことできるかな?
ぼくだったら、どうだろう。
隆の両親みたいな人に育てられてたら、ぼくも隆みたいな行動ができていたんだろうか?
それとも今と同じで、おばあちゃんとか友だちに頼って助けを求めているだけだろうか?
「それにしても暑いな~。まだ着かないの?」智生の声がした。
「もう少しかかるかな。ちょっと休憩しようか……木の陰に入ろう」隆の声に従ってぼくたちは木陰に入り水筒のお茶を飲んだ。
続
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます