挑戦
そんな……。
もしかしてって期待できる場所がわかったのに、また校区外?
そりゃ、天狗さんはいくらでも待つって言ってくれてるけど。
大人だったら……ううん、せめて中学生だったらぼくたちだけで自転車で行けるのに。
このまえ、おばあちゃんと見たような不思議なことを
ぼくがうつむいて爪をかんでいると、
「なあ、その場所って校区の端っこからどのくらい離れてるんだ?」
「えーと……1キロちょっと、かな。測ってないからわからないけど」隆之介が答えた。
「距離が、どうかしたの?」
「こないだから言ってる『校区外に保護者の許可なしで行ってはいけない』というのは、おれたち子供だけで自転車で……ってことだよな?」
「そうだよ」隆之介が答えた。
「ということは、逆にいえば校区内だったらどこでも、許可なしで自転車に乗って行っていいってことだよな?」
「そう……だけど。あ!!」
「ど、どうしたの?」
隆之介が急に大きな声を出したのでびっくりしちゃった。
隆之介は蓮と顔を見合わせてニヤニヤしてる。
どうしたんだろう??
「だろ?」
「だね」
2人だけは話が分かっているみたいだけど。
たぶん、ぼくも同じような顔をしているんだろうな。
「……わかんない?」隆之介がぼくたちに聞いてきた。
ふたりしてコックリとうなづく。
「ふたりとも、校区外に許可なしで自転車で行ってはいけないのは知ってるよね」
「もちろん」智生が言った。
「ところで、校区外に家族と車ででかけてて、行った先でひとりで歩いてて注意されたことは?」
「それは、ないよ」と、ぼく。
「つまりは、そういうこと。校区外であってもそばに自転車がない状態だったら注意をうけない、もしくはうけにくい」
あ!!そうか。
智生も気がついたようだ。
「「校区ギリギリまで自転車で行って、そこから歩けば校区外へも行かれる」」
……ハモってしまった。
「正解」隆之介が拍手しながら言った。
「まあ、歩くのがちょっと大変かもだけどね」
「でも、もしも『どうやってここまで来たの?』って聞かれたら?」ちょっと気になったので聞いてみた。
「バスに乗ってでもいいし、家族の車ででもいいし。なんならずっと歩いてきたって言ったら、ビックリはされるけど怒られることはないと思うよ」隆之介がこともなげに答えた。
「それにしても……まさか蓮がそんな妙案を思いつくなんて……ぼくも、まだまだだな」
同感だった。
「ねえ、どうやってそんな名案を思いついたの?」
「なんとなく……かな。校区外へ自転車で行くのがダメっていうだけで校区外に行くことは問題ない。だったら自転車に乗ってないならいいんじゃないか?って思っただけだよ」
続
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