新たな謎解き 5
梅雨の長雨のせいでいつもの場所に集まれない日が続いていたある日、学校から帰ろうとしたぼくを『渡したいものがあるから、うちに来て』と
「母さんが、高橋君に渡してって言ってたんだけど持ってくるの忘れちゃったんだ」
「?いいけど、このまま行ったがいい?」
「そうだね、できればそうしてほしいかな」
ふたりで肩を並べて歩き、学校から少し離れたところまで来たとき隆之介がふと口を開いた。
「ほんとは、渡したいものってのは口実。伝えたいことがあったけど集まれないし、学校では言えないからね」
「あ、天狗さん関係?」
「うん。とうさんが教えてくれたんだけど……
「観音像?えーと、仏像みたいなやつ?知らない……見たことないけど、どうしたの?」
「観音像がある敷地内にわき水がわいているらしいんだけど、その水が霊水と言われているんだって」
「そうなの?霊水って、どんなご利益があるんだろう?」
「なんでも、若返っただとか病気が治ったとかいう話だったようだよ。言い伝えだけどって」
「へえ、若返るとか病気が治るなんて、昔話の養老の滝みたいだね」
「そうだね。でもさ言い伝えとして残っているということは、ほんとにそういう使われ方をしていたのかもしれない。それにさ」
「うん?」
「もし、そういう水だったら。天狗さんが“なかった”としても、
「あ!そう、そうだよね」
隆之介が言うとおりだ。
元の姿を取り戻すことばかり考えてたけど、体力的なものも回復させてあげる必要もあるもんね。
「その場所……行ってみたいね。どこにあるの?」
「場所は父さんに聞いたらわかると思う……今度は校区内だったらいいんだけどね」
「そうだよね。ぼくたちが自分で行ける場所ならうれしいんだけどね」
その週末は久しぶりによく晴れて、ぼくたちはいつもの公園で顔を合わせることができた。
「こないだなんだけどさ」
集まるが早いか隆之介が話しだした。
「こないだって?」
「ああ、ごめん。悠斗には話したんだけど、わき水が出ている場所をとうさんが教えてくれたんだ」
「ほんと!すっげ~。どこどこ?」
「えーとね。
なんだか隆之介の口調が変?
気になったので聞いてみることにした。
「だけど?何かあるの?」
「場所が……ね。微妙に校区から外れているんだ」
「それって……」
「そう。もしも行こうと思ったら、保護者の許可をもらうか連れて行ってもらわないと行かれないんだ」
続
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