新たな謎解き 4

 「わき水……ねえ」

ぼくたちは座り込んでそれぞれ考えたけれど、簡単には思い出せそうになかった。

「考えてても思いつかないしさ、宿題ってことにしてかくれんぼ始めようよ」智生ともきが言った。

「そうだね。じゃあ、じゃんけんしようか」隆之介りゅうのすけも賛成して立ち上がった。

ぼくとれんも立ち上がって『最初はグー!じゃんけん……』

今日は隆之介がになった。

「じゃあ、いくよ。せーの!いーち、にー、さーん……」ゆっくり10数え終わって、3人で探しに走りだした。

今日はどの回も順調に探せたので、5時をを知らせるメロディが流れるまでにみんな2回ずつになることができた。

 

 「来週までに、どこかひとつでも候補地が見つかるといいよね」帰りぎわに隆之介が言った。

「そうだね。あーあ、来週もママ出張に行ってくれた……いてっ」言い終わらないうちに蓮がぼくのおでこを指ではじいた。

悠斗はると、それって言っちゃいけないことだと思うぞ?おばさんがかわいそうだよ」

「そうだよ?天狗さんの姿を取り戻すのに熱心になるのもいいけど、その前に家族を大事にしなくっちゃ」隆之介も言った。

「ええっ?ちゃんと大事にしてるよ?ただ……ママがいたら自由がきかないもん。出張に行ってくれたら、家にいなかったら、今日みたいにおばあちゃんの家に行って井戸に行ったりできる……いたたたた!」

急に頭がぴりぴりとした痛みに襲われた。

 

 【この馬鹿もの!】

「て、天狗さん?ぼく、何かした?」ぼくは痛む頭をさすりながら、与えた本人……天狗さんに文句を言おうと思って声をかけた。

だって、天狗さんが嫌がるようなことはなんにもしていないんだもん。

【……ぬしが、わしの頼みを聞いてくれようとする姿勢は有難く思う。じゃが、親を粗末に思うような事は勘弁ならぬ】

「え……そんな、粗末になんて扱ってないよ」

一時いっときであろうと、いないほうがいいと思うのは粗末にあつこうておるのと同じじゃ。……わしは、己の欲にまかせて勝手に親の元を去った親不孝者じゃから偉そうなことはいえぬ。もちろん修行の道に身を投じた事は後悔しておらぬが、せめてひとこと言って出てくるのであったと。わしの凄さを解ってくれぬ阿呆な親に伝える必要などないと軽んじたことを、いまだに後悔しておるのじゃ】

「ごめん……なさい」

【わかればよい。前にも言うたと思うが、時間なぞ、幾らかかっても構わんのじゃ。ぬしらができる範囲で手伝てつどうてくれれば、それでよい……む、頼んでおるわしが偉そうな口をきいてはいかんの。ほっほっほ】

……天狗さんが、自分でツッコミ入れて笑った。

話が聞こえていたらしい蓮たちも、目をまん丸くしていた。

 

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