井戸 3

 そして週末。

公園にいつものメンバーで集まったときに智生ともきが興奮気味に話し始めた。

「オレ、井戸の場所わかったかもしれない」

「ほんとに?」ぼくが言った。

「マジかよ!」と言ったのはれん

「どこにあるの?ぼくも一か所聞いたんだけど、同じ場所かな?」と隆之介ルりゅうのすけがうながした。

「ほら、神社あるだろ?でっかいの」

「ああ、富田神社?」

「あそこの奥のほうに井戸があるんだって」

「え~?あんなとこにあった?」ぼくも何度か、というか初詣くらいにしか行ってないけれど、それでも井戸を見た記憶はなかった。

「あの、入り口のところの、手とか洗うとこ?」

「違う違う。神社にむかって右の奥のほうに井戸があるんだって」智生が説明してくれた。

「そんなとこ、ぼく行ったことないや」

「……ぼくが聞いた場所と同じだね、智生」りゅうが言った。

 

 「昔、天皇の使いに水をケンジョーするのに使われた井戸だとか言ってたよ」智生が言った。

「誰に聞いたんだ?」れんが聞いた。

「隣の家のばあちゃん。町内でいちばん年とってるから、何でも知ってるかな?って思って聞いてみたらビンゴだったよ」

「ぼくは、かあさんに聞いたんだ。結構がある神社みたいだね」

ふたりとも、すごいや。

「ふたりとも同じ場所ってことは、そこの可能性って高いんじゃない?」智生が興奮気味に言った。

「ただ……問題があるんだよね」隆が言った。

「問題?」蓮が言った。

「うん。どうやってそこまで行くか……だよ」隆が言った。

「あ」ぼくが言った。

「校区外……だね」

「そう。自転車で行ける距離なんだけど、親の許可がいるってやつ」隆が言った。

 

 「そんなの、許可もらったフリしていけばいいんじゃ?」蓮が言った。

「そういうわけには、いかないよ」智生が言った。

「おれの兄ちゃんが小学生の時、親に内緒で校区外に自転車で行ったんだけど、知ってる人には会ってないはずのになぜかバレて。親に連絡がいって、許可もらってないのバレて、家に帰ってから大目玉くらってたんだ。どこでだれに見られてるかわからないから……さ」

「だね。障子に目あり、だよ」隆が言った。

「だから無難に行動しようとするとバスで行くか、だれかの家の車で連れて行ってもらわないといけないんだけど」

「……ぼくんとこは、には難しいかも」ぼくは言った。

ママは天狗がどうのって話は、まず信じてくれない。

だから頼るとしたらおばあちゃんなんだけど。

もちろんおばあちゃんは元気だし、もう仕事はしてない。

車の運転も問題ない。

だけどおばあちゃんの家も校区外だから、まずママの許可をもらわないといけない。

「ママに出張の仕事が入ったら、行けるかも……」

そして、もう一つ。

おばあちゃん、すごく人見知りなんだよね。

「あと、おばあちゃん、すごく人見知りなんだ」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る