謎解き 3

 「水だったら何でもいいというわけではないと思うよ」隆之介りゅうのすけが言った。

「でもさ、試してみてもいいんじゃ?せっかく玉もあるんだし」智生ともきは“実験”してみたくてたまらないみたいだった。

「まあ、むだだとは思うけど。悠斗はるとはどう思う?」と、隆之介りゅうのすけがぼくに意見を聞いてきた。

「う~ん。ぼくも、あの池はなんとなく違う気がするんだけど。智生が試したいって言うならいいと思うよ」

「よっしゃ!決まり。じゃあ行こうぜ」智生はそういうと一番に走りだした。

ぼくたち3人は顔を見合わせた。

みんな(やれやれ)という顔をしていた。

それでも、智生が走っていった方向へぼくたちも走ってむかった。

 

 ぼくたちが着くと、智生はもう池のすぐそばに立っていた。

「おっせーよ。つーかさ、実験、おれやりたい!やっていい?」

「別にいいけど・・・・・・あ、池の中に落としたりしないでよ?」ぼくは玉を智生に渡しながら言った。

「わかってるって」智生は池のそばにしゃがんで、玉を親指と人差し指でつまんで水に近づけた。

玉が水につかろうとしたとたん『いたたたたっ』と智生が頭を押さえてしりもちをついた。

はずみで土の上に落ちた玉を、ぼくは急いで拾った。

【馬鹿者!なんというものに近寄せるのじゃ!】

天狗さんの声が頭に響く。

拾ったときよりも元気?になったからか、響き渡るような声だ。

声はぼく以外の3人にも聞こえてたみたいで、みんな不思議そうに周りをきょろきょろと見回していた。

「天狗さんの声だよ。ぼくも最初聞いたときはびっくりしちゃった」そうみんなに説明をした後で『ごめんなさい』とぼくは天狗さんにあやまった。

そしてりゅうが思いついたことと、この実験をするまでのいきさつを説明した。

 

 【ふうむ。わからぬでもないし、わしを助けてくれようとする心意気はありがたい。が、しかし。かようなけがれ水にわしを近づけるなど、もってのほかじゃ】

「悪かったよ。謝るよ。でも、だからって、あんな痛いこと・・・・・・」智生が半分べそをかきながら言った。

・・・・・・きっと、ぼくと同じ“ぴりぴり”をされたんだろうな。

元気になった分、きっとぴりぴりも・・・・・・そう考えたぼくは、智生には悪いけど実験したのがぼくじゃなくてよかった、なんて思った。

「そりゃたしかによごれた水だけど、けがれ水は言いすぎなんじゃないの?」それまでずっと黙っていたれんが口を挟んだ。

そうだよね。

たまにだけど釣りをする人だっているんだし。

けがれたにおいがするから、そう申した。わしが住まっておったころには、かいだことがないにおいじゃ】

汚れた臭いって、どういうことなんだろう?

そう思ってたら隆之介が言った。

「・・・・・・池がけがされてるってことじゃないの?ほら、観たことないかな?ずっと前のアニメ映画で、たくさんのゴミで汚された川の神様が出てくるやつ」

 

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