謎とき

 「ありがとう、助かったわ」

ピザを食べながらママが言った。

「ひと晩離れてただけなのに、なんだか急にしっかりした子になったみたいよ」

「そうなの?」

「だって前だったら、ママが作るのを待ってるだけだったでしょう?」

「そうかな?」

そうかもしれない。

だって、焼くだけの冷凍ピザでもママが焼いてくれた方が美味しいって思ってたもん……食べるだけの方がラクだっていうのが正直な気持ちだけど。

でもおばあちゃんの家にひと晩だけど泊って、お手伝いして気づいたんだ。

できることだけでも、手伝って『ありがとう』って言われながら食べた方がもっとずっと美味しいってことに。

そして、思った事をそのままママに言ったらニッコリ笑ってこう言った。

「それだったら、おばあちゃんにも感謝しなくちゃね」

そして続けていった言葉は、今のぼくにとっては嬉しいことだった。

 

 「あのね、もしかしたらママ、出張することが増えるかもしれないの」

「え?そうなの?」

「うん。そんなにしょっちゅうということはないと思うんだけど、その時はまたおばあちゃんの家に泊まってもらうことになるけど、いい?大丈夫?」

「ぼくは大丈夫だよ。おばあちゃんの家も楽しいもん……テレビがないのはちょっとさびしいけどね」

「仕方ないわよ。おばあちゃんテレビ苦手なんだもん。でもよかったわ。その時はお願いね」

「うん、わかった」

夕ごはんが終わって部屋に帰ったぼくは、ついバンザイをしてしまった。

しょっちゅうではないにしても、堂々とおばあちゃんの家に行く口実ができたんだもん。

出張の時だけじゃなく、『忘れ物しちゃった』という言い訳も使えちゃうかもしれない。

天狗さんの謎ときに夢中になってたぼくは、ママの出張の日が早く来ますようにと祈ってしまった。

 

 「そういえばさ」

何日かたった頃、学校で隆之介りゅうのすけが話しかけてきた。

「前にさ、天狗さんは『水の神様の使い』だって言ってなかったっけ?」

「あ、なんか言ったかも。おばあちゃんが言ってたのを、そのまんまりゅうたちにも言った気がする」

「それで思いついたんだけど。もしかして天狗さんに関わる場所って水に関係がある場所なんじゃないかな?」

「え?水に?」

「うん。最初の浄化も流水でやったら、いくらかだけど効果があったって言ってたし」

……そうかもしれない。

「それ、アリかもしれないね。今度試してみようか」

「なになに?なんの話?」

たまたま横を通りかかってぼくたちの会話を耳にしたらしいクラスメイトの拓也たくやが口を挟んできた。

(あ、めんどくさい奴に聞かれちゃった)そう思いながらりゅうを見ると、まるで何も聞こえなかったような顔をしてそっぽをむいていた。

 

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