天狗さんの過去 3
「
おばあちゃんがおそるおそるといった感じでたずねた。
【そうじゃ。弁解するようじゃが、直接この手を下したわけではない。あの日、大雨を降らせたまではわしの所業じゃった……無論、頃合いをみて止ませるつもりじゃった。じゃが、まだ大丈夫と調子にのって降らせすぎたせいで川が氾濫し、川下の家が流されて……家の者たちが命を落としたのじゃ】
「間接的に……。でもそれ以前にも作物を駄目にされてたでしょう?その時には、そういう……ことは起こらなかったのですか?」
おばあちゃんが疑問を口にした。
ぼくも同じことが気になっていた。
【作物は、風で飛ばすも半分以上は無傷なまま残したし、雨も干あがり過ぎぬうちに降らせたりしていたのでな。人命に関わるには至らなかった。それ故、
「そんなことがあったんだ」
【激高した父上は、その場で消し去ることもできたであろうわしを、六つの部位に分けた。両の手、両の足、身体そして頭とな。そして頭のみを玉に封じ残りを違う場所へと飛ばしたらしい。そしてこう申された『反省せよ。いずれ時が過ぎ、おぬしの声に反応し協力するものが現れれば、もしや元の姿を取り戻せるかもしれぬ。全てはおぬしに関わる場所にある』とな】
「『おぬしに関わる場所にある』これまた、抽象的なたとえね。まずはその謎から解かないといけないわけか。気の長い話ね」
おばあちゃんがため息混じりにつぶやいた。
そして壁の時計を見上げた。
「あら!もうこんな時間。
そう言われてぼくも時計を見てびっくりした。
いつのまにか1時を過ぎているんだもん。
天狗さんの話に夢中になって、時間が経つのを忘れちゃってたんだ。
おばあちゃんが作ってくれた焼き飯を食べながら、ぼくは天狗さんの分身がありそうな場所を色々考えてみた。
でも、さっぱりわからなかった。
おばあちゃんも同じことを考えていたみたいで、時々頭をひねっていた。
天狗さんは、さすがに長くしゃべったせいで疲れたのか『しばし休む』と言ったきり出てきてくれなかった。
昼ごはんを食べた後で、おばあちゃんがまた湯飲みにはちみつ湯を作ってくれたので玉を入れた。
これで、また元気になってくれてるといいな。
午後は、ずっとおばあちゃんの本を読んで過ごした。
いつもは探偵ものを読むのだけれど、今日は『ロビンソン・クルーソー』を読んだ。
二冊あったからめくってみて、漢字が少なそうな方を選んだ……もしかしてぼくのために買ってくれてたのかな?
夕方になって一緒にスーパーで買い物して、夕ごはんを作るお手伝いもした。
うちでもたまにお手伝いしてたけど、おばあちゃんのところでするお手伝いはなんだか新鮮で楽しかった。
続
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