天狗さんの過去 2

 「それって、どういうことなの?っちゃんと天狗になれたから閉じこめられたって,変じゃないの?」

ぼくは聞いてみた。

ちゃんと言われたとおりに修行して天狗になれたのに、閉じ込めるなんておかしいよ。

封じられたって天狗さんは言ってたけど、出てこられないところに入れるんだもん閉じ込めたのと同じじゃない?だから聞いたんだ。

【閉じこめ、ではない。封じ、じゃ】

「どっちも同じでしょ?出られないって事だし」

「ちょっと、違うかな」

おばあちゃんが口を挟んできた。

「どう、違うの?」

「そうねえ。閉じこめるだと今持っている能力がそのまま使えるけれど、封じるだとその力が使えなくなるの。・・・・・・悠斗は確か視力がよかったわよね?」

「うん。両目とも1.5だよ」

「だったら、近くも遠くもよく見えるでしょ?閉じこめだったら、そのよく見える目のままでいられるの。でも封じるだと目が見えないようにされる、そう言ったらわかるかな?」

ほんとだ、全然違う。

「じゃあ、天狗さんが封じられたってことは、天狗さんの能力?も使えないようにされたってことだよね?でも、それってどうして?」

 

 【わしが、己の能力におごっていたということじゃ。さきも申したとおり、わしは周囲の者よりも秀でておった。修行はさすがに厳しいものではあったが、重ねるうちに容易たやすくこなせるようになっていった。それによって能力ちからもどんどん高まっていき、父上もわしを褒めてくれるようになっていった】

「すごいじゃない!」

【じゃが、わしは道を誤った】

「あやまった?悪いことしたの?」

【そうではない。わしは能力を悪しきことに使つこうたのじゃ】

「あしきこと?」

「悪いことってことよ」

「悪いことって、泥棒でもしたの?」

【そのような愚かなことはせぬ。わしらは修行により、風や水など自然の力を借りて我が力のように使うことができるのじゃ……空を飛んだり、水の上を歩いたりもできる。意のままに風を吹かせることも、雨を降らせることも可能になった。その『借りている』はずの力を『己の力そのもの』と勘違いしたわしは……】

「??どうしたの?」

大風おおかぜを吹かせて里の者が丹念に育てた作物を駄目にしたり、干ばつで雨を乞うておるのに降らせなんだり……誰かが困り嘆くのを見ては楽しむようになっておった。本来は誰ぞの助けになるために得た力を逆のことに利用したのじゃ。幾度か父上に諫められたがわしは聞く耳をもたなかった。そしてとうとうある日、父上の逆鱗に触れ、このように封じられたという次第じゃ】

「何をされたんですか?封じ込まれるほどのことだから、よほどのことじゃ?」

【……人を殺めたのじゃ】

 


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