天狗さんの過去
「それで、どうしたの?」
【わしはそのころ、周りの者のあまりの無能さに辟易しておっての、
「おとうさんたちには?おうちの人には、ちゃんと言って行ったの?」
【まさか、その頃はそのようなことは些細な事と思うておったからの。わしが帰らなかったことは“神隠しにおうた”と諦めたらしいと、のちに聞いたわ】
ぼくもおばあちゃんも、ただびっくりして天狗さんの話を聞いていた。
天狗さんって、もともとはぼくやおばあちゃんと同じ人間だったんだ。
でも??
「ねえ、天狗さんって、ぼくたちと同じ人間だったって言うけど。その、病気になったりとか年をとったりはしないの?いったい今、
【ぬしが問うておるのは、寿命のことか?いわゆる死なぬのか?と聞きたいのであろう?】
……聞きにくくて口ごもったことをズバッと言われて、ぼくはついうつむいてしまった。
【何歳か……は、わしにもようとはわからぬ。修行の間は里との交流を断っておったからの。奥深い山の中におったゆえ、人の世の流れがわからぬのじゃ。おまけにこれに封じられてからは、季節さえもわからぬようになったからな】
「そう……なんだ」
【それから、死なぬのかということじゃが。おそらく、命あるものとしていずれは死ぬこともあろう。じゃが、それが
なんだか、想像しても追いついていかない。
ぼくがまだ子供だから?と思ったけれど、横目でみたおばあちゃんもあっけにとられたような顔をしていたから、いろんなことを知ってるおばあちゃんのような大人でもわからないことなんだと少し安心した。
ふと思いついたことがあったので聞いてみた。
「ねえ、天狗さんは“父上”に言われて天狗になる修行をしたんでしょう?」
【うむ】
「じゃあ、なんで封じられちゃったの?ちゃんと天狗さんになれたのに?」
ぼくは、修行が上手くできなかったから封じられた・・・・・・閉じ込められたって思ったんだ。
おばあちゃんちで読んだ昔のまんがにあった、いたずらしたり言うことをきかなかったりしたら物置におしおきで閉じ込められるってシーンを思い出したから。
【いや、その逆じゃ。ちゃんと天狗になれたから封じられたといったが正しいの】
続
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