お泊りの日 4
玉をはちみつ湯に入れてしばらくすると、またお風呂に入ったような感覚がした。
それも、さっきよりもずっと強く。
「天狗さん、気持ちいい?」
【これは……よいぞ。なにやら蘇るような心持じゃ】
「そうなの?ねえ、おばあちゃん。天狗さんね……」
「私にも聞こえたわ。さっきより、ずっとはっきりと」
しばらくたって湯飲みから玉を取り出して拭いたら、前よりももっともっと輝いているように見えた。
おばあちゃんに言ったら、私もそう思うと同意してくれた。
これって、天狗さんの力が強くなっているってことなのかな?
でも天狗さんの声をおばあちゃんと一緒に聞けるようになったのは、すごく嬉しい。
だって、天狗さんが使う言葉って、時々難しくて全然わからなかったりしたから。
「ねえ、天狗さん」
【なんじゃ?】
「天狗さん、前に『元の姿を取り戻す手伝い』してほしいって言ってたでしょ?」
【うむ。いかにも】
「それって、どんなことをしたらいいの?ぼくにできることなの?」
【できるかどうか、ぬしの能力を知らぬからわからぬが。わしを残りの部分を探してほしいのじゃ】
「どこにあるか、わかるの?」
【わからぬ・・・・・・が、この村周辺であることは間違いなかろう】
「村・・・・・・?で、でも、どこにあるのかわからなかったら、探しようがないんじゃない?すっごく広い場所から探すのって大変そう」
【手がかりは、ある】
「え?あるの?どんな手がかり?」
【わしと残りの部分とは相通ずるものがあって、近づくと共鳴するようになっておるのじゃ……と、わしを封じた者が申しておった】
「……また大雑把な手がかりだこと」
おばあちゃんが呆れたように言った。
「もう少しわかりやすい手がかりはないのかしら?というか、封じ込めたのはいったいどなたなの?」
【……父上じゃ】
「父上って、お父様?どうしてお父様が息子を封じ込めるの?」
今度はびっくりしたような口調で尋ねてる。
ぼくもびっくりした。
だって、お父さんが自分の息子を封じ込めるだなんて。
いくら天狗っていう、人間ではない?力を持っている存在だとしても、そんなことってひどいよ。
【父上といっても、わしの生みの親ではないぞ。天狗としての父上じゃ】
「え??天狗さんってお父さんがふたりいるの?」
【驚くのも無理はなかろう。わしはもともとは、ぬしのような人間の子どもとして生まれてきた。自分で言うのもなんだが
続
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