お泊りの日
翌日、ぼくは着替えをいれたバッグと昨日預かった紙袋を持って自転車でおばあちゃんの家に行った。
「みやさ~ん。おじゃましま~す」
「はい、いらっしゃい」
いつものようにリビングに行ってソファに座ると、おばあちゃんが聞いてきた。
「クコ茶は毎日続けてる?」
「うん。もちろんだよ、昨日ママに『まだ続けてるの?』っていわれちゃったけどね」
「そう、でも続けてるのは偉いことよ」
「それ、ママも言ってた」
「それで、効果は出てきてる?」
「うーん、天狗さんに聞くと少しずつだけどせいきが戻ってきている気がするって。でもまだなんだかすっきりしないって。あ、それでね、昨日友達が“お母さんおすすめ”のものをくれたんだ。だから今日持ってきてみたんだけど」
そう言ってぼくはおばあちゃんに紙袋を渡した。
「ホワイトセージ?」
紙袋から紙を取りだしたおばあちゃんんは、書かれている文字を読みビニール袋の中身を取りだした。
「あのあと浄化について少し調べた時に見た名前だけど、実物を見るのは初めてだわ」
「おばあちゃんも見たことないの?」
「パワーストーンとか、あまり興味がわかなかったからね」
「ふうん。それで、どうやって使うの?」
「この葉っぱに火をつけて、その煙にくぐらせるらしいけど」
「燃やすの?危なくない?」
「ずっと燃やすわけではないみたいね。火をつけたらすぐに消すんですって。消したら煙だけが残るみたいよ」
「え~?やってみたい。でも天狗さん、煙たくないかな?」
「一回につき燃やす葉は一枚だそうだから、そこまで煙たくはないんじゃないかな?」
「だったらいいけど」
「じゃあ、準備しなくちゃね。火をつけるから燃えるものの上ではダメだし。何かあったかな?」
おばあちゃんはあちこちをガサガサと探し始めた。
「あった、あった」
しばらくしておばあちゃんは小さい箱のようなものを持って戻ってきた。
「捨てずにおいてよかったわ」
「それ、なあに?」
「むかし、じいが貰ってきた粗品の灰皿よ。灰皿はほかにもいっぱいあったから使わないままだったの」
おばあちゃん、自分のことは“みやさん”と呼ばせるくせに、おじいちゃんのことは“じい”なんだ……ちょっと不公平?そんなことを考えてしまった。
「ほら、火をつけるから玉を準備しなさい」
おばあちゃんに言われて、ぼくはポケットから玉を出した。
「天狗さん、今から浄化?っていうのをやるよ。セージの葉っぱを燃やした煙にくぐらせるから、もしかしたら煙たいかもしれないけれど、ごめんね」
【かまわぬ。ぬしがいつも入れてくれる湯のおかげで精気も戻りつつあるし、きっとその煙もよきものであろう】
続
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