実験を続ける

 「ただ、いわゆる特効薬ではないから、今日ですぐ効くということはないの。毎日毎日続けることが大事よ」

「毎日か。さすがに毎日おばあちゃんちに通うと、ママが変に思うよね。どうしよう」

「うちに来なくても、悠斗はるとが自分の家でやったらいいんじゃない?湯のみくらいあるでしょう。クコの実は私が買っておいてあげるわ」

「湯のみはあるけど。でも、ぼくにできるかな?」

「できるかな?じゃなくて、やるの。天狗さんの手助けするって決めたんでしょう

?」

そう。

助けてあげたいって思った。

みんなとも一緒に助けようって約束してるし。

「うん。がんばってみる」

「その調子。やりかたは簡単だから。湯のみに、この実を5個か6個いれてお湯を入れるの。熱いから用心しなさいよ。ああ、小さめのマグカップだったら持ち手がついてて熱くないかもね。そしてしばらくおいて触れるくらいの温度まで下がったら今日みたいにつけてあげるの」

「つけたあとのお湯はどうするの?ママに何か言われないかな?」

「そうねえ。気づかれないうちににカップを洗って片づけるか、私とやった実験を続けてるとでも言っておきなさい。ふつうだったらお茶として飲めるものだけど、浄化に使ったものだからね、飲まない方がいいと思うわ」

「うん、わかった。ありがとう」

 

 それからの数日、ぼくはおばあちゃんに言われたとおり、毎日学校から帰ったらまずクコ茶を作り、ある程度冷めたら玉をひたすという作業を続けた。

最初はママも『何してるの?』と聞いてきたけど『おばあちゃんとやった実験を続けてる』って言ったら、それからはなにも言わなくなった。

クコ茶にひたしたあと天狗さんに話しかけると、どうやら少しずつだけど精が戻ってきている感じがすると言ってくれた。

どのくらい戻ってるかはわからないけれど、なんだかぼくも嬉しくなった。

それでも、まだ玉そのものが少しだけくすんでいる感じは残っていて、天狗さんもまだすっきりしていないって言ってて。

そのくすみが取れてしまったら、もっと力が戻るのかな?なんて考えたりもした。

そして週末の金曜日。

学校に行ったら隆之介りゅうのすけが話しかけてきた。

「悠斗、おはよ。アレあのあとどうなってる?」

「おはよ、りゅう。アレは、おばあちゃんに教わったことを続けてるけど」

別に決めたわけではないけれど、玉のことはなんとなくぼくたち4人だけの秘密みたいになっていたから、学校ではその話はしていなかったんだけど……それなのにわざわざ聞くってことは。

「あ、もしかして」

「うん。昨日かあさんが出張から帰ってきたから、聞いてみたんだ。そしたら『じゃあ、試してみたら?』って教えてくれたことがあるんだ。今日、学校が終わってから渡したいんだけど、いっしょにウチに来てくれるかな」

 

 

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