実験開始
次の日、ぼくは約束通り昼ご飯のあとでおばあちゃんの家に行った。
「おばあちゃ・・・・・・みやさーん。来たよー。おじゃましまーす」
「はい、いらっしゃい。じゃあ、さっそくだけど始めようかね」
おばあちゃんの言葉に促されて台所に入ると、食卓の上には湯呑がひとつ置いてあった。
中を見ると赤いちいさな粒が10個くらい入っていた。
「この赤いのがクコの実なの?」
「そうよ。実を熱湯にいれてふやけたら飲み頃らしいけど。飲むならまだしも中につけるからね,熱すぎても悪いから先に作っておいたのよ」
「ありがとう。じゃあ、入れてみるね」
そうして僕はポケットに入れていた玉を取りだした。
「天狗さん?今からクコの実のお茶の中にいれるよ。もしも熱かったら教えてね」
【そうか。世話をかけるの】
それを聞いて、ぼくは玉を湯呑の中にそっと入れた。
「どのくらい入れていたらいいのかな?」
「さあねえ。さすがにそういう情報は見つけられなかったからわからないけれど……まずは30分くらいで様子をみてみようか」
「わかった。じゃあ、待ってる間本を読んでてもいい?」
「いいわよ」
「わぁい。あ、そうだ。あのね、ぼくの友だちのお母さんなんだけど、天然石とかアロマとかが趣味なんだって。だから今度浄化?に使えるものを聞いておいてくれるって」
「へえ、そうなの。それは心強いわ。というかお友達に玉とか天狗の話したの?」
「うん。遊んでるときに見つけたものだったから、玉のことはみんな知ってたもん。天狗さんの話をしても驚かなかったし。むしろ手助けするってノリノリになってる」
「それは頼もしいわ。さて、待ってる間少し片づけでもしてこようかな。
そう言っておばあちゃんはキッチンタイマーを30分にセットしてキッチンから出て行った。
ぼくはおばあちゃんの本棚から雑学本を取りだして、リビングのソファに座って読むことにした。
動物の生態について書いてある本。
ひとつの動物につき見開き1ページだから読みやすいんだ。
ピピ……ピピ……ピピ……
アラームが鳴ったので、ぼくは本を置いてキッチンに行った。
おばあちゃんはもう戻っていて、食卓の椅子に座っていた。
「どうだろう?効果はあったのかな?」
「さあねえ。とりあえず取りだして水気をふいてあげたら?」と言ってキッチンペーパーを渡してくれた。
ぼくは湯呑の中から玉を取りだして、そっと水気をふいた。
「天狗さん、気分はどう?」
【ふむ。はいる前に比べると、いくぶんか精気が戻ったような気はするが】
「そうなんだ。おばあちゃん、あのね天狗さん、お茶に入る前よりはせいきがもどった気がするって言ってる」
「そうなの。滋養強壮によいというのもまんざらうそじゃなかったのね」
「じようきょうそうって?」
「さすがの悠斗もまだ知らないかな。滋養強壮剤の滋養は、食べ物とかから取った栄養素を体に必要な栄養に変え、その栄養を体の全身に届けることでね、強壮とはその結果、体の弱っているところを強くする働きのことよ」
続
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