明日の約束

 「ただいまー!」

遊びから帰って玄関でスニーカーを脱いでいたら、キッチンからママが顔を出した。

左手に持ったスマホを耳に当てながら、右手でぼくを手招きする……どうやら誰かと電話中みたい。

手を洗ってキッチンに行くと、ママは耳にあてていたスマホをぼくに渡しながら言った。

「おばあちゃんからよ。悠斗はるとに用事があるみたい」

「ありがとう。……もしもし、悠斗だよ。どうしたの?」

「ああ、悠斗。今日、話してたこと覚えてる?」

「うん。あ、あったの?」

「大した量は入ってなかったけどね、ちゃんと見つけたよ。今日はもう夕方だから、明日にでも試しに来る?」

「うん!行く行く!ねえママ、明日もおばあちゃんちに行ってきていい?」ぼくは調理中のママにたずねた。

「いいけど。今日も行ってきたんでしょ?今度は何の用事?」ママは調理の手を止め、ぼくを見て言った。

ママがこう聞き返してくることは、おばあちゃんと予想していたことで。

だからぼくは、おばあちゃんと予行演習していたを言うことにした。

 

 「今日、おばあちゃんちに行ってた時にわからないことが出てきてね。おばあちゃんもすぐにはわからないみたいだったから、調べておくって言ってくれてたの。それで、わかったから教えてあげるって」

「教えるって、電話じゃダメなの?」

「うん。ちょっとした実験が必要になるんだ」

「ふうん。まあいいけど、お昼ごはん食べてからにしなさいよ?」

「はぁい。あ、おばあちゃん。昼ごはん食べてからなら行っていいって」

「わかった。じゃあ明日ね」

そう言っておばあちゃんからの電話は切れた。

ぼくはママのスマホを食卓の上において、自分の部屋に行った。

 

 机の前に座って、ポケットから出した玉に話しかけてみた。

「ねえ、天狗さん。起きてる?」

ちょっと間があいて返事があった。

【なんじゃ?】

「あのね、おばあちゃんが少しだけどクコの実を見つけたんだって。だから明日おばあちゃんちに行って、浄化?きょうそう?を試そうと思ってるんだ」

【そうか】

「あと、昼間遊んだ友達のお母さんのひとりが、パワーストーンが好きで、浄化とかにも詳しいらしくて。いい方法があるか教えてもらう約束してるんだ」

【ぱわーすとーんというのは、なんじゃ?】

「あ、天狗さんが入れられてる水晶?とか、天然石をそう呼ぶんだって」

【ふむ・・・それから友達というのは、昼間ぬしのそばにいた共のことか?】

「おのこ・・・・・・って?まあ、いいけど。ねえ昼間、ぼくの周りが見えてたの?」

【見るだけはな。声も聞こえてはおったが。ぬしのほかに3名おったの】

「あたり。でも声が聞こえてたのだったら、話しかけてくれたらよかったのに」

【まだ、今のぬしとのように近しい位置にいないと声を届かせるのは難しいようじゃから、やめておいたのじゃ】

あ、そっか。

話しかけてくれてもぼくだけにしか聞こえないし。

そしたらまた通訳したりで大変だったかも……特に智生とかしゃべりたがっただろうな。

 

 

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