意思疎通5

 お昼ごはんを食べてかたづけをすませたら、もう1時になっていた。

「1時間半ってとこね。そろそろ、どうかしら?」

おばあちゃんは蛇口をひねって水をとめ、コップから玉をとりだしキッチンペーパーで水気をふいて、ぼくに渡してくれた。

見た感じは、ぜんぜん変わっていない。

窓の光にすかしながら、聞いてみた。

「天狗さん、気分はどう?」

【ふむ。悪くはない。精気もわずかだが回復しておるようじゃ】

「よかった。おばあちゃんが“浄化”っていうのをしてくれたんだよ」

【おばあちゃん?】

「えっと、ぼくのママのおかあさん……って、なんていったらいいの?おばあちゃ……みやさん」

「そこは、祖母で伝わるんじゃないの?」

「そっか、ありがと。えっとね、天狗さん。おばあちゃんっていうのは祖母のことだよ」

【ぬしの祖母殿か。世話をかけたの】

「世話をかけたの、だって」

「どういたしまして。もっと効果が高い浄化をしてさしあげたかったのですが。なにか御存知ないですか?……と聞いてくれる?」

「わかった。あのね、もっと効果が高い浄化をしたかったけど、なにかごぞんじないですか?って」

【ふうむ。浄化となるのかはわからぬが、強壮としてなら薬草などを煎じて飲む事があったぞ】

「ありがとう。あのね、として薬草などをせんじた茶を飲む事もあったって」

「薬草茶ね。確かに効果はありそうね。どんな薬草を煎じていたかも聞いてくれる?」

 

 ぼくを通してしか会話ができないっていうのも、なかなか不便だよ。

なんとか直接会話ができるようになるといいのに。

「どんな薬草を煎じてたの?」

【そうさのう、玉竹ぎょくちく木瓜ぼけ枸杞くこ鳴子百合なるこゆりといったところかの】

……聞いたことがない名前ばっかりだ。

おばあちゃんからメモ用紙を借りておいてよかった。

「えっと、ギョクチク、ボケ、クコ、ナルコユリ……知らない名前ばっかりだよ」

「そうね。ボケとクコなら聞いたことはあるけれど今の時期手に入るかしら。あ、クコの実ならスーパーに売ってあるかもしれないわね」

「そうなの?」

悠斗はるとは杏仁豆腐食べたことないかな?あの上に赤い実がのってるでしょうあれがクコの実なのよ……スパイスコーナーに売ってあるといいんだけど。クコの実でお茶を入れる方法やその他の薬草はあとで調べてみるね」

「うん。ありがとう」

ふと時計をみると3時を過ぎていた。

「あ!もうこんな時間。友達と遊ぶ約束してるから、ぼく行かなくちゃ。あ、ビー玉どうしよう?」

「わたしが持っていてもどうしようもないし。とりあえず持って帰りなさい。なんならあとでスーパーに行くから、クコの実を見つけたら買っておくわ」

「じゃあ、明日も来ていい?」

「いいわよ、いらっしゃい」

 

 

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