おつかい2

 おばあちゃんちは、ぼくの家から海がわに自転車で10分くらいのところにある。

ここは、ママのおばあちゃんち。

パパのおばあちゃんちは車を使わないといけないくらい遠くにあるから、年に何回かしか行かれないんだ。

でもれんは、どっちのおばあちゃんちも飛行機に乗らないと行かれないくらい遠いって言ってた。

会えるのは何年かに一度だから、しょっちゅうおばあちゃんちに行けるぼくがうらやましいんだって。

おばあちゃんちについて自転車にかぎをかけ、前かごから袋を取っておばあちゃんちの玄関まで行った。

右上のインターホンを押す。

『ピィィィィンポォォォォォォォン』

相変わらず間がぬけた音を出すなぁ。

ぼくんちみたいに『ピンポーン!』とか隆之介りゅうのすけんちみたいに『ビビィー』ってするどい音が鳴る方がかっこいいと思うんだけどな。

チャイムを鳴らしてから玄関の引き戸に手をかけると、かぎはかかっていなかった。

 

 引き戸をあけて玄関に一歩入ったぼくは、声をかけた。

「おばあちゃーん。ぼく!悠斗はると。ママから頼まれたもの持ってきたんだけど、どこにおいたらいいの?」

……返事がない。

家の中はシーンとしている。

まあ、いてもテレビとかつけないおばあちゃんだから、静かなのはあたりまえだけど。

そして思い出した。

ことを。

 

 「さーん。ぼく!悠斗。ママか……」

「はい、いらっしゃい」

ぼくがしゃべり終わる前に、声がかかった。

「わあっ!」

驚いたぼくをみて、“みやさん”……おばあちゃんは笑いながらぼくの横をぬけて玄関から部屋の中に入っていった。

「ほら、突っ立ってないであがっておいで。荷物は玄関の隅においててかまわないよ」

「はあい。おじゃましま~す」

くつを脱いで、ちゃんとそろえておばあちゃんのあとに続く。

リビングに入りソファに座ると、おばあちゃんがキッチンから麦茶の入ったコップを持ってきてくれた。

のどがかわいてたぼくは、氷が浮いたコップをもらって麦茶をひとくち飲んだ。

 

 「で?今度は何を拾ったの?」

ゴフッ!!!

おばあちゃんの言葉にびっくりして、飲み込もうとした麦茶にむせてしまった。

「なん……ゴフッ、で……ゴフッ、なにか……ゴフッゴフッ、拾ったって……ゴフッゴフッ」

ああ、苦しかった。

ようやく落ち着いたぼくに、おばあちゃんは事もなげに言った。

「だって、悠斗は何か拾うと必ず私のところに来るでしょう?って」

 

 

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