おつかい
「
ドアをあけたママが言った。
「さっきから呼んでたんだけど、なかなか来ないから。話し声が聞こえたけど、誰かと話してたの?」
「ううん?あ、ひとりごと!ひとりごと言っちゃってたかも。読んでたマンガのセリフがかっこよくて」
机にマンガ置いたままでよかった。
「そうなの?まあ、いいわ。ごはんにしましょ。今日は悠斗が好きなミートボールスパよ」
「やったぁ!」
食卓につくと、ママがお皿にスパゲティを盛ってミートボールが入ったソースをたっぷりかけてくれた。
「いただきます!」
大好物のスパゲティをほおばっているとママが話しかけてきた。
「ねえ悠斗。明日の土曜日、おつかい頼んでもいい?ママ、急に仕事が入っちゃったのよ」
ぼくは口の中のスパゲティを飲み込んで答えた。
「いいよ。何を買ってきたらいいの?」
「朝までにメモに書いて、お金と一緒にテーブルに置いておくわ」
「うん、わかった。あ、ねえ。買い物も行くけど、おばあちゃんち行ってきてもいい?自転車で」
「おばあちゃんち?いいわよ。なにか用事?」
「特にはないけど、また本を貸してもらおうと思って」
「わかったわ。あとで電話しておくわ。あ、おばあちゃんちに行くなら持っていってほしいものがあるんだけど頼んでいい?」
「うん」
「じゃあ、それも明日の朝までに準備しておくわ」
「うん」
ぼくはもくもくとスパゲティを食べ、おかわりもして食事を終えた。
部屋にもどったぼくは机の前の椅子に座り、拾ったビー玉を持ってのぞきこんだ。
もちろん直接光にむけないように注意して。
でもくすみは見えるけれど、さっきのような姿は見えないままで。
(もしかして、夢でも見ちゃってたのかな?声が聞こえたりとか頭の中がピリピリしちゃったりとか。でも、そんなマンガみたいなことは、そう簡単におきるはずはないよね)
ふでばこの中にビー玉をもどし、さっき読めなかったマンガを読むことにした。
よく朝起きた時には、ママはもう仕事に出かけたあとだった。
ママの出勤が早いのではなく、ぼくが起きたのが8時だったからなんだけど。
キッチンに行くとテーブルの上にメモが置いてあった。
『悠斗へ。
おばあちゃんちに持って行ってもらう荷物は袋に入れて玄関に置いてます。
もしかしたら少し重いかもしれないから、用心してね。
あと、牛乳とジャム(ヨーグルト用ね)を買っておいてね。
ジャムは悠斗が好きなのを買って下さい』
ママからのメモと一緒に千円札が一枚、飛ばないように小皿でおさえてあった。
顔を洗って朝食を食べた僕は、ママのおつかいをすませるために袋を持って、戸じまりの確認をすませて、ビー玉をポケットに入れて自転車でおばあちゃんの家に向かった。
続
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