第6話 部活?

「それじゃあ、気をつけて帰れよ〜」


さっきまで寝て起きたら普通にロングホームルームが終わってしまった。

今日初めて来たので、何か言われると思っていたが何も言われなかったな。

横を見ると隣の席の東さんがこっちをガン見してきている。

この子、人を殺せる眼差しをしている。

俺は東さんになんかやらかしたかと思って思いたある節が無いか考えてみたが寝てただけなのでわからない。

もしかして会社と同じで何もやってないからガン見されてるのか。


「東さん、どうした?」


「……寝てる……」


「初っ端寝てたからガン見してたのか?」


「……うん……」


何か東さんの返答も慣れてきた気がする。

俺はもう帰ろうとして席から離れようとしたら、一人駆け寄ってくる奴がいた。


「東海林君、一緒に部活を見て回ろう」


「部活を見て回るって体験入部的なものでもやってるのか?」


「さっきのロングホームルームで今日と明日は部活が各自で、発表的な事をやってるって先生言ってたじゃん」


「普通に寝てたから知らんかった」


「今日、初日だよね」


「俺は初日だな」


「東海林君はどうしようもないから、さっさと行くよ」


「分かった、東さんじゃあな」


「……うん……」


俺と秋山はクラスから出てまず中庭的な所に向かった。

中庭でもある程度の部活が、新一年生を勧誘している。

街中で宗教関連の事を勧めてくるおばさんみたいだなと俺は思う。


「東海林君、さっきの子とは、もう仲良くなったのかい?」


「あれって仲良いの部類に入るのか?」


「話せるだけマシだよ。僕なんて中学一年の頃誰も話しかけてくれなかったから」


「秋山には俺が話しかけたからいいじゃんか」


「確かに、東海林君だけは話してくれたね」


初回、秋山に殺されかけた以外は、普通に話してきたつもりである。

拓人がどこ行ったか分からない現在、秋山ぐらいしか話す奴いないしな。

本当に拓人はどこに行ったんだろうか。

海の藻屑にでもなったのか、釣りが好きすぎて帰ってこないのかは分からないが、どうせ連絡取らないし良いか。


「東海林君は入りたい部活とかある?」


「帰宅部」


「中学の時と同じじゃん」


「秋山も帰宅部だっただろ」


「ここら辺の部活は体育会系が多いから僕達には話しかけられないね」


「女子みたいな奴と筋肉無さそうなやつには、話しかけてこないよな、入るなら文化部系に入ろう」


「茶道部でも行くかい?書道部とかでも良いけど」


「この学校の全部活が載ってる物とか無いのかな」


「あっちに貼ってあるよ」


秋山が指を刺している方向を見てみると、受験の時の合格者の番号が貼ってあった壁に、何か紙が貼ってある。

あれの事を秋山は言っているのだろう。


そして二人で紙の前まで行ってみたのだが、アホみたいに部活が多い、申請すれば何でも通るレベルで部活がある。似たような名前の奴もあるし、漫画研究部とか結局何を研究してるねんって感じで、多分何も活動してないと思われる部活も多数ある。


「なんだろう、手芸部とか茶道部とかがまともに見えてきた」


「奇遇だね、僕もまともに見えてきたよ」


「文化部系は校舎内みたいだし、そっち行くか」


「そうだね。僕たちには運動部は無理だよ」


「干からびて死んでそうだしな」


結局良さそうな部活がなかったので文化部系を見に行くことにした。

中学みたいにまた帰宅部で良い気がしてきた。


俺と秋山が校内を歩いていると一番最初に読書部の部屋の近くまでやってきた。

部室の前には、女の子が立っている。

何やってんだろ。俺と秋山はその女の子を観察する事にした。


「秋山、あの子こっち見てきてない?」


「そりゃそうですよ。側から見ればこっちがおかしい人達ですから」


言われてみれば観察してるって結構やばい行動だよな。

常識人(ツッコミ)の拓人が居ないせいでやりたい放題になってきた。





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