第六話




 扉には聖力が掛けられているのか、びくともしない。


 フィーリンとも離され、ヴィンセントは途方に暮れていた。



 なぜか、聖力も使えない。






 日が落ちてくる頃になってやっと、アタシアは現れた。




「どう?考え直してくれた?」



「するわけないだろ」


 彼女を睨みつけるが、遠慮なしに近づいて触れようとしてきた。


 反射的に振り払っても、アタシアは気にも留めず三日月のように瞳を歪め、聖力を放つ。



 動かなくなる身体に、ヴィンセントは唇を噛んだ。





「全く、どうしてこんなに聞き分けがないのかしら。魔女さん、育て方間違えちゃったのね。聖力があるってわかってたら、預けたりしなかったのに」



「あんたに育てられなくて良かったと、心底思うよ」



 その返しに、アタシアは大袈裟なため息をつく。






「魔女さんにはもう、帰ってもらったわ。あなたはここから出られないし、聖人として働くしかないの。私の後継として」


 やっと自由になれるわと、伸びをする。



 次の瞬間、外から大きな爆発音がした。








ドンドンッと扉が叩かれ、大声が響く。


「魔女が門の前で暴れています!我々では近づくこともできず、聖女様の手をお借りしたく参りました!!」



 敬礼する騎士は、砂埃や煤で汚れ、所々凍っている。





「魔力は返してあげたのに...まだ何か用事でもあるのかしら」



 アタシアは本当に不思議だというような顔で、ヴィンセントの視界を塞ぐ。



 パチパチと目の前が白けて、彼の意識は遠のいていった。


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