第4話 3
一人の魔女が、偉大な魔女の肖像画を見上げて言った。
「絵も同じしゃ。現存してる肖像画で一番古いのは、いつのもんだちょ思う?」
「え、え~と…」
「千年いってないんじゃにゃいかね」
「そうだりょうね」
「つまり、今ある肖像画は、本人の顔を見たことがない画家が描いたものじゃ。ぐふ」
「でもさ、もしも本人を見て描いたとちても、実物より美人に描くにゃろ。だから、どっちにしろ顔は後世に伝わらないじょ」
「確かにそうだ!」
「わはははは」
先輩方が言うことは最もだった。
でも、私は呆然としてしまっていた。
「じゃあ、現在伝わってることって、一体…」
その時、ちょっと離れた席にいるグループが、歌を歌い始めた。
♪~偉大なるジーナは
しわがれ声で我らに語りかけ~♪
さっき、みんなで歌った歌の替え歌だ。
本来の歌詞は、“麗しい声で我らに語りかけ”だが、それを“しわがれ声”に変えて歌っている。
「ああいう替え歌はマズいのでは…」
私は心配したが、先輩方は笑っている。
「けけけ。毎年のことさ」
「しわがれ声って、何ですか?」
何か意味があるのだろうか。
周囲の目まぐるしさに、私のボケた頭は追い付けない。
「おとぎ話というか、小咄(こばなし)みたいな感じで伝わってることがあるんひゃよ」
「正式な説じゃにゃい。俗説というか、逸話というか…」
「偉大な魔女は、魔法の研究をしている時の事故で、しわがれ声になっぢまっだんだと」
「へ?」
「顔や体は魔法で若さを保てたが、そのせいで声だけは老婆のようなしわがれ声だったらじい」
「全然別の説で、魔法のペンダントと引き換えにしわがれ声になったという話しもある」
「肖像画でも緑のペンダントをかけてるだろ」
頭がくらくらした。
まさか…でも…。
「偉大な魔女に関する伝説には、神話やおとぎ話レベルのものも多いさね」
そ、そうだ。
これらは、おとぎ話だ。
「そうそう、何百年かごとに生き返るとか~」
「今年がその何度目かの、復活の年ぃ!だとか~」
「去年か一昨年だったっていう説もあるじょ~」
「昔とは暦がずれてるからにぇ~ふへへ」
「でもさ~、いくら魔女でも、復活なんてできる訳にゃいよ」
「まったく、誰が言い出したんだか!」
「わははははは!」
「うははははは!」
「おや?」
「ん?」
「新人が潰れぢまったよ~」
「飲ませ過ぎたんひゃないかい?」
「うひひ」
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