第4話 2

 そばにいた魔女が声高らかに叫んだ。

「おお、我らが偉大なるジーナ・グリスと同じ髪の色!かの魔女に幸運あれ!」

 すると、厳格で知られる魔女が、その魔女を睨みつけた。

「違~う!ジーナ様の髪は栗色だっ」

「そんなの、一説に過ぎないね」

「昔からそう言われてるじゃないかっ。栗色以外のはずがない!」

 酔っているから、二人ともいつもよりケンカっ早い。

「まあまあ、今日はせっかくの誕生祭なんだから…」

「さあ、こっちの席で飲もう」

 周りが仲裁に入り、二人を離れた席に連れて行った。

 私はおずおずと先輩方に尋ねた。

「偉大な魔女の髪の色は、諸説あるんですか?」

「最近、古い文献を研究してる連中が、そういう記述を発見したんだと。おっ、この酒うまい」

「栗色って説がまだまだ一般的だけどね。私にも一杯おくれ」

「どうぞ。あんたらもどうだい?」

「ありがとう。黒髪って説もあるとか。何でも、黒髪で描かれてる肖像画があるらしい」

「こっちにも一杯」

「ああ、どんどん飲もうよ」

「つるっぱげだったって説は…、さすがに聞かないね」

「なんてことを!よみがえってくる偉大な魔女様に殺されちまうよ!」

「ぎゃ~はははは」

「わ~ははははは」

 全員、さらに酔ってきた。

「研究が進んで、早く本当のことが分かるといいでしゅね」

 注がれたお酒を飲みながら言うと、先輩方も自分の考えを語り始めた。

「まあね…でも、簡単には分からないだろうね」

「偉大な魔女がいらっじゃったのは、二千年も前にゃ…ぷはあ~」

「分からなくて当たり前しゃ…」

「え?それは…」

 私は思わず声を上げた。

「その頃のこひょにゃんて、ほとんど口伝(くちづた)えで伝わったことだ」

「覚え違いや聞き違い、話しを面白くするためにアレンジを加えた人もいただろうし…うぃ」

「元の姿のまま伝わってることのほうが、珍じいかもじれんにぇ」

「口伝えの伝承を、文章にまとめた人がいるのは確かにゃぎゃ…」

「昔は新じい本を作る時は、手書きの写しにゃ。そうなるちょ正確さの点では口伝えとそんなに変わらないじょ」

「ぐふ~ちょっと酔ったかも…」

「最初から酔ってただろ」

「ひゃはは」

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