第4話

「マリーレ、あんたの家のほうで、派手な落雷を見たってみんなが言ってるよ。チキンクリームパイはさぞ上手に出来たんだろうね」

「はい。長老様」

 夕暮れと共に始まった誕生祭で、私は胸を張って答えた。

 プラチナブロンドの魔女は、来ていないようだった。

 そんなに不思議なことではない。一口に魔女と言ってもいろいろで、師匠のもとで魔法に関することを一から学んだ魔女もいれば、独学で魔女になった人もいる。

 長老主催のこのパーティーも、出席率はいつも6割程度だそうだ。

 パーティーが始まる前には、全員で偉大な魔女ジーナ・グリス様をたたえる歌を歌う。今の世で魔法の力が我らの味方であるのは、偉大な魔女の功績だという内容の歌だ。

♪~偉大なるジーナは

麗しい声で我らに語りかけ~♪

 歌の間中、私はこのパーティーが行われている古い城の大広間の壁にかかった、偉大な魔女の肖像画を見ていた。

 肖像画の中の偉大な魔女は、大ぶりの緑色の石のペンダントをしている。プラチナブロンドの魔女も、緑色のペンダントをしていたのを思い出す。

 歌が終わってパーティーが始まった。これから夜明けまで、みんなで羽目を外して飲み騒ぐのだ。

 私が焼いたチキンクリームパイは、嵐のエネルギーをたっぷり貯め込んだお陰で、オーブンから出したばかりの状態を保っていた。

「本番で失敗しがちなアンタが、よくぞこんなに見事に仕上げた!」

「褒めてつかわす!うぃ~、ひっく」

 先輩の魔女から褒められて、私は上機嫌だった。

「実は、失敗しかけたんです。でも、偶然訪ねてきた魔女に助けてもらって、無事にチキンクリームパイを焼くことができました!きゃはは」

 みんなも私も、すでに酔っている。

 そうだ、みんなにあのプラチナブロンドの魔女のことを聞いてみよう。

「先輩方、助けてくれた魔女がどなただったのか分かりましぇんか?髪はプラチナブロンドで、背が高くて…」

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