七、天使
美月には今書いている物語に特別な思い入れがあった。優雅な怪盗紳士が、暗号の謎を解いて歴史の闇に葬り去られようとしていた宝を見つけ出す――そして、その宝を正統に受け継ぐべき貴婦人を窮地から救い出すのだ。
〈宝にまつわる暗号〉は、実際に美月が両親から伝えられたことがきっかけになって生まれた発想だった。
「あなたがこの家を継ぐ日に、みんな教えてあげるわ」
その日を見ることは永遠に叶わないなどとは思ってもみなかっただろう――美月の母は、幼い娘に向かって言ったものだった。
「この家には、〈宝物〉が隠されているの。あなたが引き継ぐべきものよ……でも、あなたがきちんと自分を守れるようになるまでは、教えるわけにはいかないわ」
「本当に? 」
美月は母の膝にくっつきながら、母が冗談を言っているのだと思って笑った。軽やかな冗談の好きな母だったから。
母は頷いた。芝居がかってはいたが、真剣な声だった。
「本当よ! じゃ、ヒントをあげましょう――〈その宝、星の数ほど多い。誰にも見えるが見えない〉」
確か、当時の美月は「何それ! 」とケラケラ笑い飛ばしたような気がする。母はそれからも何度かそのことを話題にしたが、何度聞かされようが美月はまったく本気にしてはいなかった。やはり冗談だと思っていたし、しばらく何のことなのか真剣に考えてみても母の言うようなものに心当たりがなかったせいもある。母は美月が宮園家を継ぐ日に答え合わせをすると言ったので、それまでに〈星の数ほど多い、誰にも見えるが見えない〉ものに辿り着きたい気持ちはかなりあったが答えは分からなかったし、答えが明かされる前に両親はいなくなってしまった。
母の言葉の真意を美月が知ることは、もはや不可能と思われた。書き留めておきでもしなければ、そんなささやかな謎があったことすらいつか忘れてしまうかもしれない――そこで、美月はそのとき考えていた物語の中に〈宝〉と〈暗号〉を登場させることにしたのだ。宝の受取人である女性は、暗号を知らされてはいるが何が隠されているのかを知らない。それが宝であることすら、知る由もない。宝の正体を知り、それを狙う悪党によって窮地に立たされる彼女を、義賊の怪盗紳士が救い出す――そして、最後には彼の助力によって暗号は解き明かされ、彼女は自分の本当の素性と、相続の権利を与えられた途方もない財産の存在を知ることになる……という、結末まですでに考えられていた。
だが。
「わたしは、怪盗ジェスターだ」
彼女が〈怪盗ジェスター〉と出会ったあの晩から、筆は一向に進まなくなっていた。
美月はもともと、ジェスターに興味を持っていた。彼が関わったとされる事件の記事は、どんな小さなものにでも目を通した。弱者を守る義賊! そんな物語に出てくるような人物が実在するなんて! 誰にも正体を掴ませない、神出鬼没の怪盗。世間的に〈悪〉とされる立場でありながら、その行いの本質は人助け――美月は彼(美月はジェスターを男性だと想定していた)に憧れ、物腰の柔らかな、貴公子のような怪盗紳士像を作り上げた。
そして、彼が登場する冒険譚を構想している最中に、宮園家は当のジェスターに襲われたのだった。彼が奪ったのは、美月の平穏な暮らしばかりではなかった――彼に対して持っていた、美月の純粋な憧れ。称賛。美しい想像。こうしたものは、たった一夜を境に恐怖と疑念……さらに、憎悪にすり替わりつつあった。
信じたくなかった。ジェスターに怪盗紳士を期待していたのは美月の勝手な想像だったとはいえ、事件そのものにも、義賊だと信じていた彼の許しがたい蛮行にも、彼女はずいぶん苦しめられた。
彼は、誰にも助けを求められずに苦しむ人々にどこからともなく手を差し伸べる英雄ではなかったのか? それとも、彼が〈弱者〉だと認めなかった人々の命は、簡単に奪ってしまうような人物だったのだろうか? あるいは美月が知らないだけで、彼女の両親は義賊が命を狙うほどの罪に手を染めていたのだろうか? 彼は、本当に彼だったのだろうか? 何を信じたらいいのか分からない。そんな混乱した状況は、〈彼〉が現れるまで続いた。
橋本雅文。美月の目の前に突如現れた彼は、身近にまで迫っていた危機から美月と梅を颯爽と救い、そのまま美月の護衛になった。雅文の一切無駄のない華麗な身のこなしは、普段の彼がおっとりした温厚な青年の顔を見せているせいもあって、余計に鮮やかな印象となって美月の中に残っていた。
どちらが本来の雅文なのだろう? どちらも彼の一面ではあるのだろうが、彼が持つふたつの顔はまるで別人のもののようで、本人にそのつもりがなくとも橋本雅文という青年を謎めいた存在に仕立て上げるのに一役買っていた。サーカスに引き取られて育ったという生い立ちや私立探偵という職業まで、彼を構成するすべてが美月にとっては興味深く、魅力的だった――美月が彼に自分の〈怪盗紳士〉の姿を重ね合わせたのも、自然の成り行きだったのだ。
現実の〈怪盗ジェスター〉が残酷な罪びとであったとしても、美月は彼女の想像の中に生きている〈怪盗紳士〉にだけは彼女の理想を叶えた気高い存在であってほしかった。雅文はもちろん怪盗ではないが、彼と出会ってからというもの、止まっていた〈怪盗紳士〉の物語は流れるように進むようになっていた。構成の段階ではキザな性格ばかりが目立っていた〈怪盗〉は、本来は仕事中の姿とはかけ離れた温和でのほほんとした性格をしているという設定に変わり、華麗なだけでない人間的な魅力を持った青年として美月の心に現れた。
朗らかで穏やかな物腰に、窮地をものともしない機転、天性のユーモア。ああ、〈彼〉が本当にジェスターだったらよかったのに。ジェスターという人が、本当に〈彼〉のような人だったら――。
「よく来たね、美月」
梅から家人が誰もいないと聞いて、ふたりで別々に探しはじめた矢先だった。いつもは誰に対しても固く閉ざされている義父の洋館の扉がわずかに開いているのを見つけたのは……わずかに聞こえる話し声につられて奥へ入り、思いもかけない義父のおぞましい秘密を知ってしまったのは。
暗い地下室から、義父が呼ぶ。それは猫の背を撫でてやっているような優しささえ感じられる声だったが、彼の目は底知れない澱のような色でどろりと濁っているように見えた。
美月はアトリエの中で立ちすくんだ。このままここにいるべきではない。踵を返して立ち去り、しかるべきものに救いを求めるべきだ。だが、ただひとり愉快そうにしている誠三の陰に自由を奪われた加代や松田、そして雅文の姿を認めてしまっては、彼女にはどうすることもできなかった。
「下りておいで美月……いい子だ……本当に……」
誠三は薄ら笑いを浮かべて美月を招き、美月が地下室への階段を一歩一歩彼の方へ近づいていく間に、近くの瓶から白い錠剤をひとつかみ取って噛み砕いた。誠三以外の三人は、みな青い顔で彼女を見つめている――雅文がそっと首を横に振るのを見て、美月は無意識に立ち止まった。
誠三は美月が階段の途中でためらっているのに気づいて、その原因となっている雅文に目を向けた。はっきりとは見えないが、彼は左足に傷を負っているのではないか……。
「美月さん……」
雅文は背で両腕を戒められて片膝をついたまま、自分を睨む誠三の目など意に介さない様子で美月に呼びかけた。
「美月さん、逃げてください。どうか……」
誠三は雅文の懇願を聞き、せせら笑って美月を振り向いた。
「いいとも、美月。来たくなければ屋敷へ戻っても構わないよ――だが、おまえがわたしに背を向けるなら、この三人が命をつなぐ望みは絶たれてしまうわけだが」
誠三は血のついた果物ナイフを弄びながら言った。まさか、あれで雅文を刺したのか。美月は身震いし、困惑し、恐怖した。誠三は本気だ。雅文が叫んだ。
「美月! 」
美月はこの一喝に打たれたようになって足に力が戻ったが、誠三は憎々しげに雅文を蹴り飛ばした。雅文は最初の一撃になんとか受け身を取ったが、うまく起き上がれないまま容赦ない暴力にさらされた。
「やめて、お父さま! 」
自分でも驚くような大きな声が出た。誠三は動きを止め、ナイフを持ったまま両腕を広げた。
「おまえの頼みなら聞かないわけにはゆかない。おまえも、わたしの言うことなら聞かなければならないよ。……さあ、ここまで下りておいで」
美月は雅文のまなざしから目を逸らし、力を取り戻した足でまっすぐ地下室へ下りた。ひやりとした空気。むせ返るような鉄さびのにおい。誠三に従って、自分がどんな目に遭わされるやら美月は恐ろしかった。それに、従ったところで他の三人が助かる可能性は薄そうだ。だが、ひとまず無抵抗の雅文にもたらされる無慈悲な暴力を食い止めなければならなかった。
誠三は美月が他の人の顔には認めたことがないような粘ついた笑いをニヤニヤと口元に広げ、近くまでやってきた美月の頬を撫でた。
「かわいそうに……おまえは罪深い子だ。おまえは、身も心も美しくありすぎた。おまえの美しさがわたしに欲を起こさせ、おまえの両親を死なせたのだよ」
地下室の誰もがこの瞬間息を詰めた。誠三にとっては、かなり決定的な言葉だったに違いない――ずっと優しく養育してくれた義父が本性を現わすのを見た美月の心がこの一言によって跡形もなく粉砕され、彼女の表情が絶望で染め上がるのを期待していたのかもしれない。
しかしこのとき美月は、恐らく誠三の期待とはまったく違ったことを思っていた。彼女は呟いた。
「……それじゃ、ジェスターは……」
「ああ。あれはあの場をしのぐための大嘘だよ――おまえはすっかり騙されてくれたようだが。なんなら本人にその辺りのことを聞いてみるといい。なあ、橋本君」
雅文と目が合うと、彼は美月に向かってちょっと肩をすくめてみせた。美月は大して驚きを感じなかった。なにしろ、彼女はこのところ雅文を通してジェスターを模した怪盗紳士の物語を執筆していたのだ。かえって望みがひとつ叶えられたかのような喜びすら感じていた。
「それじゃ……」
美月は震える唇を開いた。恐怖していたのではない。雅文は目を見開いた――あまりある感動に心を動かされた美月の瞳は、血なまぐさい地下牢の暗がりに似つかわしくないほど輝いて見えたに違いなかった。
「やっぱり、怪盗ジェスターは……わたしの父と母を殺したわけじゃなかったんだわ」
「誓って」
雅文は美月の目を見てはっきりと答えた。脚を傷つけられて片膝をついた彼の姿は、貴婦人の前にひざまずいて真摯に誓いを述べる騎士のように気高かった。
誠三は美月の表情を見て、醜悪に顔つきを歪めた。そして、手に持ったままのナイフを雅文に突きつけた。
「安いロマンスは三文小説の中だけにしてもらえるかね。わたしが描きたいのは宗教画――それも、人の形をしていながら人の身を超えた清廉さを湛えた天使の姿だ。……さあ、美月。その台の上に乗って、縄の輪の中に首を入れなさい。目の前で憧れのジェスターをめった刺しにされたくなければね」
「そいつは助かりますね! 全身ずたずたになれば、この手の縄も切れるでしょう! 」
雅文は真摯に美月を見つめながら、口調はあくまで朗らかに言った。
「美月さん、早く地下室から出てください。危険から遠くへ離れるんです……それだけで、君は三人の人間の願いを一度に叶えることができるんですよ」
「助命は叶わんがね」
「ほう。美月さんが従えば、我々の命を救うつもりがあるかのような言い草ですね」
雅文は誠三の注意を自分の方へ引きつけつつ、背後でごそごそと何かを続けている。手を自由にしようとしているのだろう。彼はこの局面にあっても生還をあきらめていないのだ。
彼の両手が解放されれば、全員が助かる見込みはあるのだろうか――美月は必死に考えた。
美月だけなら、地下室から逃げ出して助けを呼ぶことはできる。だが、その後は? 拘束されたまま地下室に残された残りの三人は? 梅は? 助けが来るまで、美月はどうすればいいのだ?
逆に、美月が義父の要求に従った場合――美月が義父の注意を引いている間に雅文が拘束を抜け出せば、反撃の機会が生まれるかもしれない。なにしろ、彼は帝都を騒がすジェスターだ。不可能を可能にし、鮮やかに目標を遂げる世紀の怪盗紳士だ。
橋本雅文。彼ならば、あるいは――。
美月は恐怖で体が自由に動かないという様子を装って、のろのろと部屋の中央にしつらえられた石の台に上がった。両手を手錠で縛められた松田が真っ青な顔で唇を引き結び、誠三の隙を窺っているのが分かる。加代は目を見開いて美月に向かって首を振っている。美月が小野寺家にやってきてからというもの何かと厳しい義母だったが、美月は加代のことを怖いと思ったことはなかった。今なら分かる。加代に信頼を置いたその感覚は正しかったのだと。
「これはね、おまえのために特別に作ってもらった機械なんだ」
誠三は雅文の首元にナイフを突きつけたままで、抑えきれない笑みと興奮を顔中に塗り広げた。
「わたしの知り合いに、舞台装置を専門に請け負っている職人がいてね。緞帳を巻き上げる仕掛けを応用して作ってもらったんだよ。天使を描くために、〈モチーフ〉を吊り上げる機械を作ってくれと言ってね――いいかい、おまえは天使なんだ。見苦しくもがいたり、呻き声を立てたりしないで美しく吊られておくれ。従わなければ松田くんを、身動きしたら加代を、呻き声を立てたら橋本くんをそのたびに刺すからね」
「お嬢さん、よせ! 」
松田は美月が縄を手に取ったのを見てついに黙っていられなくなったのか、誠三に向かって喚いた。
「この腐れ外道! おれを刺して気が済むんなら、細切れにでもなんにでもしてみやがれってんだ! 」
だが、美月は輪の中に頭を入れた。ふりではなく、本当に手が震えてなかなかうまくいかなかった。誠三は自分に向かって来ようとした松田の腹をなんなく蹴飛ばし、彼を加代の横に転がした。松田は石壁に頭を打ちつけ、その場に倒れた。
「台の上に立って、縄から手を離しなさい。手は、そうだな……おまえが救うべきこの哀れな虜たちに向かって両腕を差し伸べるように、開いてもらおうか」
美月は従った。誠三は呻くように笑い、いよいよ凶悪な仕掛けを作動させた。
※
無機質で不気味な作動音を響かせながら、機械は天井から垂れ下がった縄をゆっくりと巻き上げはじめた。最初は美月の足元に長く弧を描いていた縄は短く引き上げられていき、じきに美月の華奢な首にかかった。爪先立ちになることで苦痛をかわせたのはほんの数秒のことで、やがて美月は完全に床から吊り上げられた。
美月は目をつぶり、義父との約束どおり声を出さないよう耐えている。雅文は両腕を自由にしようと必死で縄と格闘した――実は先ほどからずっと試みているのだが、誠三の素人らしいめちゃくちゃな結び方のせいで、思った以上に苦戦していた。美月はすでに吊られてしまっており、一刻の猶予もないと思えば焦ってますます指がうまく抜けない。そもそも、縄抜けはサーカス団時代に雅文が唯一苦手としていた芸だった。縄抜けの師匠は根気強く教えてくれたが、ついに免許皆伝とはいかなかった。
焦るな、と雅文は自身を叱咤した。結び目はすでに緩みはじめている。やはり、師匠の縄に比べれば何ということはない。焦れば焦るほど演技は滑らかさを欠き、悲惨なものに仕上がる。舞台に立つものの鉄則だ。
美月の頬からは次第に血の気が失せ、両手が痙攣するように震えはじめた。首元の縄を掴もうと体が動くのを、美月が意思の力で押さえつけているのだ。誠三の〈モデル〉を満足に勤めなければ、雅文たちに危害が及ぶ――その一心で。加代は直視できなくなったのか、呻き声を立てて泣きながら目を背けた。
「いいぞ……いいぞ、美月! やはりおまえは最高の画題だよ! 」
誠三は興奮に目を血走らせながら画帖を取り、荒く息をしながら憑かれたように鉛筆を走らせた――しかし突如その焦点の定まらない瞳が、驚愕に見開かれた。
「な、なんだ……よせ! やめろ、やめてくれ! 」
加代が体を強張らせ、いよいよ不気味なものを見るように夫を見た。雅文も思わず呆気に取られた。誠三は画材を取り落とし、意識の怪しい美月に向かって――いや、彼女を取り囲むように壁に掛けられた少女たちの絵画に向かって必死にナイフを振り回している。当然ナイフは空を切るばかりだ。しかし誠三は、それが彼に残された唯一の生存手段であるとでもいうかのように〈何か〉に向かってナイフをふるい続けた。なりふり構わずに動き回る懐から小瓶が滑り落ちる。彼が掴みだしては噛み砕いていた薬剤は、一錠も残ってはいなかった。
「………! 」
ああ、ようやく――雅文は台に上がり、自由になった両腕で美月を抱き下ろした。左脚の傷からは血が噴き出したが、痛みは感じなかった。
「美月さん……」
背を支えてそっと揺すると、美月は小さく吐息を漏らしながらゆっくりと目を開いた。間に合ったのだ! 雅文は美月を抱えて台を下り、誠三から距離を取ろうと試みた。
誠三はいまだ彼にしか見えない恐ろしい幻想に捉われ、錯乱してしゃにむにナイフを振り回している。そうかと思えば、痛みを掴み出そうとするかのように頭を掻きむしり、髪を引き抜いて絶叫を繰り返した。やめろ、許してくれと訳の分からない言葉を喚き散らして逃げ惑ううちに、彼は部屋にしつらえられた薬棚に衝突した。
一体何のためにそんなものが持ち込まれたのか、考えるだに恐ろしい。ぶつかられた衝撃でガラス瓶が次々と誠三の体に落下し、中の液体が振りかかった――誠三は苦痛に満ちた悲愴な声を上げた。雅文は咄嗟に美月の耳を塞ぎ、彼女の頭を抱いてその視界におぞましいものが映らないようかばった。苦しみに床をのたうち回る誠三の顔面の皮膚は、見る影もなく酸によって溶け崩れていた。
誠三はやがて仰向けに倒れ、その場でわずかにびくびくと痙攣しているだけになった。指先や足先がときおりびくつき、ぐちゃぐちゃになった唇の残骸からか細い呼気が漏れ出てくることで辛うじて生きていると分かるが……。
雅文は加代の拘束を解いて彼女を自由にし、松田を介抱して意識を取り戻させた。そして、美月を抱いて地下室の忌まわしい暗がりを抜け出した。家人の姿が見えず、ひとりおろおろと屋敷中を探して歩いていた梅が雅文たちを見つけ、きょとんと言った――まあまあ、みなさま一体どちらにいらしたんです?
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