第10話 服
「じゃあ、次の問題は服だな。どうする?」
ふむ。
顎に手を当て、しばし思案する。
ひゅううっと風が通り抜けた。砂が舞い上がり、思考の邪魔をする。
目を細め、髪を耳にかけた。
このままの服で服屋に入ったら、改造人間であることが知られてしまう。
かといって強奪することで下手に目立つわけにもいかない。
「何も思いつかないな。ここは質問アプリを使うべきだと思う。」
コトハは、軽く頷いて同意する。
「無難だな。
……しかし驚いた。お前のことだから、追い剥ぎとか言い出すかと思ったんだが。」
「……私にだって情はある。」
「ミジンコくらいだろ。」というコトハの呟きは、聞かないふりをした。
質問アプリを開き、なんと書くか逡巡する。
「これは質問アプリなわけだが、「服がほしい」というのは質問というより願望じゃないか?質問アプリの用途が違うような気がする……。」
画面をじっと見つめてそうつぶやく。
「無理だったら無理って返ってくるだろうから大丈夫だ。」
それもそうだな、と頷いて『街で溶け込める服がほしい』と綴り、送った。
これは予め想定していたものだったのか、すぐに返事が来た。
『街に入ってすぐのところに、完全無人の服屋がある。
入ったらロボットが出てきて、改造人間用のブースに連れて行ってくれるだろう。
そこでは金は必要ないから、自由に選ぶといい。』
なるほど。
とりあえず、街に進めばいいらしい。
その店にたどり着くまで、他の人に顔を見られないようにしなければ。
画面を覗き込み、コトハも同じことを考えたらしい。
「……気をつけて行くぞ。」
厳しい顔をした目の前の改造人間に、私は「無論だ。」と無表情で返した。
改造人間X ねむねむ @nemu2
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