第9話 記憶

突如、ピコン、と音が鳴った。

どうやらスマホからのようだ。

通知を見ると、質問アプリで返信が来た、と書いてある。

おそらく先程の質問の返事だろう。

私は急いで質問アプリを開いた。


『お前を作ったのは、博士だ。X博士。』


X博士……?

何故だろう、聞き覚えがある。

脳裏に声が響いた。


*******************************************


「Xハカセー!あそびにきてくれたの?

私、ハカセのこと好きよ。

だって、ハカセは毎日あそびにきてくれるもの!

ほかのハカセとはおおちがいだわ。」


見覚えのある、薄汚れたワンピースを着た女の子が、白衣を着た男性に走り寄っていく。


「琴音。元気にしてたかい?」


ぽんぽん、と優しく頭を撫で、そう言う男性。

嬉しそうに、くすぐったそうに笑った女の子が、ふとこちらを振り向いた。

無機質な灰色の瞳に、真っ直ぐな白い髪をしている女の子は―――――――


*********************************************


私?


思わずしゃがみ込み、荒い息を吐く。


今のはなんだ?

私の記憶なのか……?


「……えーっと……大丈夫、か?」


戸惑いがちに少年に問われる。

我に返り、ゆっくりと立ち上がって、鷹揚に頷いた。


「……大丈夫だ。私の名前は、どうやら琴音というらしい。」


「……そうか。俺の名前は、琴羽だ。」


コトハ。

小さく声に出してつぶやく。

名前が似ていて、なんだか不思議な気持ちになった。

どこか繋がったような、懐かしいような……変な感覚だ。


……共通点など、改造人間であるということくらいしか無いはずのに。

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