第8話 問題

街まで残り1キロ程になった頃。


「待て。」


と言ってYが立ち止まった。


「何だ?」


私はいぶかしげに問う。


「俺たちの格好は、非常にまずくないか?」


そう言って、彼は話し始めた。


「人は、様々な服を着る。

だが、俺たちの服はまさに実験動物が着るような灰色のワンピース。

いくら外見が10歳くらいの幼さだとはいえ、これは流石におかしい。

まわりに「自分は改造人間です」って言ってるようなもんだ。

そう考えていくと、やっぱり名前もないとおかしい。」


「何故人間の真似事などする必要がある?」


ちょっとどころかとても嫌だ。

顔をしかめていると、人差し指を立てて「考えてみろ」と彼は言った。


「俺たちは今から殺し合いをするんだ。

相手だって死にたくない。卑怯な手だって使ってくる。

そう考えると、相手は街の人のふりをして近づいてくるだろう。

奇襲攻撃されると危険だ。

俺たちは相手の戦闘力を何一つ知らないんだから。

それに、街の人に紛れ込めば、他の改造人間に知られずに改造人間を倒せるかもしれない。」


「皆殺しにすればいいだけだ。」


「そんなのあとでだってできるだろ。まずは他の改造人間からだ。」


チッと私は舌打ちをする。

まどろっこしいことを。

労力の無駄だし、面倒くさい。


「まぁいい。まずは改造人間からだ。

 だがそいつらを殺しきった後は、お前が止めても私は人間を殺すぞ。」


「その時は全力で止める。」


真っ直ぐに見つめられる。

ふん、と私は鼻を鳴らした。


「止められるものならな。まずは共同戦線だ。」


私も、流石に一人で他の改造人間と戦うのは不利だと分かっている。

協力した方が得策なのは、間違いないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る