第25話 蒼い稲妻

 オーファンズは全員が同じ服装だった。まるでユニフォームのように笠をかぶり、蓑をまとっている。靴もわらじだ。そんな男たちが七人もいた。それぞれが槍をかまえ、現代の傭兵である雷神チームを地面にひざまずかせていた。なんてシュールな絵面だろう。


「ここは我々オーファンズの領地である」


 彼らを代表して中年の男が言った。ハの字をした口ひげが特徴的で、やたらと甲高い声だった。


「きさまら、なぜ許可なく侵入しようとした」


「この島は誰のものでもない。自由に通行してなにが悪い」


 ひざまずき、両手を頭のうしろで組まされている九条が抗議した。


「ど腐れ傭兵め。我々の島で好き勝手しよってからに」


 ひげ男は持っていた槍を九条の喉元に突きつけた。


「いつからおまえらの島になったんだよ」


「まだ立場がわからんのか、小僧」


 ゆっくりと槍が九条の喉へ押し込まれていく。九条は顔を歪めながら、顎を引いていった。


「やめろ酒井」


 その声でピタリとひげ男の動きが止まった。ふり返りもせずに「宗一か」とつぶやき、小さく舌打ちした。


「先生は暴力を好まない。その槍をおろせ」


 その男は、馬に乗って現れた。端正な顔立ちだった。年齢は二十代半ばといったところか。大きな青い弓を背負っていた。


 タイヤを射抜いた本人の登場だ。


 ビッグトレーラーのスリップでできた地面の跡に、馬の蹄の跡を悠然と刻みつけながら、彼は近づいてきた。


「こやつらは傭兵だぞ宗一。この聖なる島を荒らしてきた害虫だ」


「昨日島を守ったのは誰だ? それに車椅子の女性もいるじゃないか。槍をおろせ」


 この宗一という名前の青年は、高い地位なのだろうか。ひげ男は不満そうだったが、槍をおろした。


「仲間が失礼した。許してほしい」


 一列に並ばされた神楽の面々に向かい、宗一は言った。それからうしろの横転したトレーラーを見やり「よく怪我人がでなかったな」と胸をなでおろした。


「おねがい、解放して」


 乃雨が訴えた。


「それはできない。きみたちは警告を無視した」


「政府のスパイが入り込んだのよ。私たちは捜索中だったの」


「そんなうそにだまされるものか」


 ひげ男が言った。


「うそじゃない。おれたちは任務の途中だった」


 九条も訴える。


「こやつらを信じるのか、宗一」


 ひげ男から問われるが、宗一は泰然としていた。


「判断するのは先生だ」


 そして仲間全員に向かい告げた。「予定通り、この者たちを村に連れて帰る」

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