第12話 新たな出会い

断られた事には驚いた。

「何でですか?」


「だって浄化の魔法など使ったらアリス様相当疲れてしまうでしょ?」

夢の中でのアリスはそうであった。


浄化の魔法を使った後、疲れたと言ってはシリウスに抱っこされていた。


そんな光景は見たくない。


「ドレスは公爵家に持ち帰って専門家に任せます。アリス様に負担がかかるような事はしたくありませんの」

そう言うとディアナは頭を下げる。


「わたくしはそろそろお暇します、皆さまはどうか楽しんでいらして」

ケイトはすぐさま帰り支度をし、ディアナの後ろをついていく。


「わ、私もご一緒します」

慌ててキャシーも付いてきた。


「あら駄目ですわ、あなたはまだここでやることがあるでしょ?」

優しく微笑み、キャシーを撫でる。


「茶会は交流の場、普段辺境伯領にいるとなかなか出会いもないでしょ? どうせなら良い人脈を作ってから帰られるといいわ。そうね」

ディアナは偶々近くにいた令息に声を掛ける。


「初めましてバゼル=リドリー様。わたくしはディアナ=マクラインと申します」

声を掛けられた令息は驚いていた。


「俺の名を何故知っているのです?」


「知っていますわ、御父上が騎士団長ですもの。その跡継ぎであるバゼル様も有名ですわ」

ふふっと優雅にディアナは笑い、そしてキャシーの背を押す。


「そんなバゼル様に紹介したいです。こちらのキャシー=ブレナガン様はあなたが尊敬する辺境伯爵の娘ですわ」

紹介され、驚きつつも挨拶をする。


「あの、キャシー=ブレナガンと言います。父は確かに辺境伯爵ですけど、ディアナ様が言う事は本当なのですか?」


「本当です。ですが、どこでその話を?」

バゼルは剣の腕がたつ辺境伯の事を尊敬していた。


「秘密ですわ」

ディアナは夢の中でその事を知っていた。


そしてキャシーは騎士となるバゼルに惹かれていたのも知っている。


「二人で色々な話をしてみるといいわ。そうね、辺境伯爵様の猛獣退治なんかの話などいいんじゃないかしら」

バゼルはキラキラした目でキャシーを見る。


「ずっと聞いてみたかったんだ。どうやって辺境伯爵様はあのような大きな猛獣を倒せたのだ? 教えてくれ」


「父の若い頃の話ですよね、お酒を飲む度に聞かされていました。実は……」

二人が話し始めたのを見て、ディアナは馬車に乗って帰路に就いた。


ようやく大きなイベントが終わった。


(これできっと殺されたりはしないわ)

この時はそう思っていたのだが。

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