第11話 浄化

「何故殿下がこちらに?」


「王家主催のお茶会でのトラブルだ、どうなったか気になってね」

普通ならそこまで気を留めない。


ディアナだから心配なのが大きかった。


(キャシー嬢をいじめている様子はないな)

ウルズに目を向けてもいじめはなかったと目線で合図をされる、思わず安堵の息を吐いた。


「お気遣いありがとうございます。挨拶が遅れてしまい大変失礼いたしました。わたくしはディアナ=マクラインです」


「キャシー=ブレナガンです」

二人の令嬢は緊張しながらもシリウスに挨拶をする。


「二人ともドレスは大丈夫だったかい?」


「大丈夫ですわ。今は休憩を兼ねてキャシー様とお話をしていましたの」


「そうか。ではそろそろ二人とも茶会へ戻らないか? まだ途中なのだから」

二人きりにさせとくのはいけないのかもしれないと判断し、そう声をかけた。


「いえ、申し訳ありませんが疲れておりまして。もう少しここで休んでから伺いたいと思います」

シリウスははたと気づく。


ディアナのドレスが別なドレスになっていた、色味は似ているがデザインが違う。


「そのドレスも良く似合っているね」

そう言われ、ディアナは驚いた。


「何故わかったのですか?」

あの騒動の中、ドレスのデザインまで覚えられるだろうか。


「君の事はずっと見ていたから覚えている。胸元に青のグラデーションのレースがあっただろ」

夢の中ではずっと話をしていたし、印象が強かったので伝えたのだが。


「胸元……そのようなところを見ていたのですか」

ディアナは顔を赤くし、羞恥で体を震わせていた。


「いや、そう言う意味ではなくて」

これはまずい、このままでは女性の胸を見る変態だと思われてしまう。


「そう言えばオルタナ嬢が浄化の魔法を使えるそうだ。オルタナ嬢、ぜひ二人のドレスの汚れを浄化してくれないか?」

ようやく名を呼ばれ、アリスはやや不貞腐れながら前に出る。


「アリス様はそのような事も出来るのですか?」

キャシーは尊敬の目でアリスを見る。


「えぇ出来ますわ。ぜひ見せてください」

ケイトの技術で殆どの汚れは落ちている。


だから、アリスはそれっぽくドレスを光らせるくらいにした。


(浄化って疲れるのよね)

まだ子どもの体なのもあり、そこまでの魔力もない。


キャシーのドレスを綺麗にしたように見せかけ、ディアナに向き直る。


「では、次はディアナ様のドレスをお見せください」

正直気乗りはしないがシリウスの気を惹くためだ。


「お断りしますわ」

はっきりとディアナはそう言った。

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