第10話 噓つき
これて安心だ。
ディアナは茶会から去った。
これでアリスは自分が婚約者として選ばれるのだと確信し、飛び切りの笑顔でシリウスに近づく。
「君は……」
声を掛けられたので礼をし、挨拶をする。
「オルタナ侯爵家の娘、アリスです。殿下にお会い出来る日を楽しみしていましたわ」
「折角挨拶をしていただいたのだがすまない、少し席を外させてもらう」
そう言うとシリウスは先程ディアナ達が去っていった方へと歩を進める。
(今行ってしまったら、婚約できないわ)
思わず腕を掴み引き止めてしまう。
「何かな、オルタナ嬢」
突然のアリスの無礼にシリウスは冷ややかな声と目で返す。
「あのもしかして二人の様子を見に行くのかと思いまして。それならあたしも一緒に行きます。心配ですもの」
夢の中のシリウスは優しいアリスに心惹かれたが、今はまだそのような所を見せられていない。
だから焦ってしまう。
「実はあたしには浄化の魔法が使えるんです。きっと二人のドレスの汚れも落とせますわ」
何とか振り向いてもらわないと、ディアナに心が向いてしまうかもしれないと必死になっていた。
「ほう」
シリウスは掴まれた腕を振りほどき、やや緩和した目でアリスを見る。
「では一緒に行こうか」
「はい!」
シリウスが自分の事を信じてくれて嬉しい。
(よくもまぁ自分の仕掛けた事なのに悪びれもしないで)
喜ぶアリスとは裏腹に、シリウスの心はどんどん冷えていく。
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