実況33 賢人解放(解説:LUNA)

 INAイナが跡形も無く消し飛んだ、全く同じ地点に全く同じ彼女が再構成された。

 やはり、彼女もここに来るまでに使っていたのだろう。自動蘇生魔法が掛かっていたようだ。

 けれど、もう勝負はついている。

 いくらINAイナでも、5対1の至近距離でなおも抵抗する程、いじっぱりでは無いだろう。

 そう思いたいけど、

「あたしの負けだ。もう一度、殺せばそれで終わる」

 両手を上げて、気落ちしたように言った。

 別にわざわざ止めを刺す必要はない。

 相手が負けを認めたのなら、私達だって無意味な殺傷はしたくない。

 けれど、それでは納得してくれないのだろう。

 こう言うトコ、無駄に几帳面な娘だと思う。

 HARUTOハルトが、こんな状況にあっても淡々と進み出た。

 あっ、今更後付けで説明するようだけど、彼、アタッシュケース大の鞄を手に提げていたりする。

 何が入っているかは、今からのお楽しみ。

「……一緒に見て欲しいものがある。勝負を棚上げするだけの価値は、保証しよう」

 まあ、そうなるよね。

 今のトコ、彼と私だけが知っている、最後のネタばらし。

 一人でも観客が多く居て欲しい気持ちはわかる。

「つまらなかったら、あたしの勝ちで良い?」

 何だそれ。

 変なトコでいい加減な娘でもある。

 その辺のバランス考え直したら、もう少し生きやすいんじゃない? って思うけど。

「……良いだろう」

 へぇ、とINAイナが肩をすくめるのを見ているのかいないのか。

 彼は、今更ながら、ラスボスである生命樹の顔を見据えた。

「……これより、生命樹を一撃で始末する」

 そして、宣言した。

 流石に皆、各々に呆気に取られた顔をした。

 特に、この“優しい世界”のシビアさを散々味わってきた老兵KAIカイが。

「現実に則した事を言え。出来る筈が無いだろう!」

 だけどHARUTOハルトは少しも揺るがず、彼を見つめた。


「……出来る。貴方の、真の力があれば」

 

 そう、宣告した。

 いや、真の力とか言うけど、別にKAIカイだって隠し事をしているわけではない。

 そんなコト言われたって、無茶振りとしか思えないだろう。

 けれど。

「……これより、自分とLUNAルナが共同で、あるスキルを行使する。

 それを見れば、何をすべきかが自ずと解る筈だ」

 さて。

 そのタイミングが来たと、彼の目が私に言っている。

 私は彼と並び立ち、遠く生命樹の顔を見据えた。

 そして。

 私は、HARUTOハルトの持っていた鞄を受け取ると、開けた。

 中にはぎっしりと、紙幣が詰まっている。

 私達パーティの全財産、500,000ゴールドである。(日本円にしておよそ50,000,000円相当也)

 それを鷲掴み、私は頭上高くに撒き散らして。


 金を魔法触媒として光炎で燃やした。

 ヒャッハー! こんなモン、今ではトイレットペーパーにもなりゃしねぇぜ!

 ……こほん。失礼。

 つい、前ゲームでの癖が出た。

 気を取り直して、詠唱しよう。

 

 ーー此処より先に在りしは、条理無き青天の星空のみ!

 ーー刻にさえ忘れ去られし、古の英霊に我、乞い願う!

 ーー我が想い総てを星とし、其を道標に我等を新たな境地へと導き給え!

 

 ーーパルデンス・リベラティオ!

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 私達の全財産の成れの果てである、光の粉雪が螺旋を描きながら降り注ぐ。


【パルデンス・リベラティオ(★9)

 次ターン、パーティの保有する★を30にする。

 反動として500,000ゴールドを失い、

 

 

 術者二人はキャラロストする】

 

 

 奇遇だね、RYOリョウ

 ここ一番でキメると考えた時、その人の考える代償って皆同じなんだろうね。

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