実況24 新たなる境地に至り、地下にて新たなる技を開眼す(解説:LUNA)

 グラウンドポイントから地上へ出て、進軍。

 補給が必要となったら、また近場のグラウンドポイントを探し、地底大陸へ帰還。

 他RPGで例えるなら、地底大陸が拠点で地上がダンジョン、みたいな感覚だ。

 普通は逆なんだろうけど、はみ出しものの私達らしいと思えばまんざらでも無い。

 

 地底大陸の人里に戻ると、ほぼ決まって宿を取ってHARUTOハルトと寝た。

 ロマンス判定は承認されるのも大変だけど、維持も結構大変だ。

 一度成立しても、運営AIが“この二人は冷めたようだ”と判定した場合、承認が取り消されてしまう。

 これも、現実に当人達がどれだけ仲良しであろうとお構い無し、である。

 まあ、当人らの脳反応を参照する運営AIに対しては嘘はおろか、自分を誤魔化す事さえ難しいので、浮気だとかハーレムだとかは成立しないらしい。

 現代のAI技術もそこまでお粗末ではないので、実際の関係と大きく乖離した判定をされるケースはまず無いらしいのだけど。

 ただ、とりわけ私達くらいの若さだと、ブランクが長いと“レス”だと見なされて承認が取り消される事はそれなりにあるらしい。

 一度取り消された人同士で再度ロマンスを組むとなると、更に判定が厳しくもなる。

 彼はどうか知らないけど、私は別に嫌では無いので、拠点での休憩ついでに頑張っている次第である。

 

 まあ、生々しい話を克明に並べるつもりはない。

 ただ、そこそこ回数を重ねて慣れてくると、その時その時の相手が何をしてほしいのか、自分のためにどう気を遣ってくれているのかが通じあっているように感じられる。

 私側がそれなりに慣れて来た今でさえ、彼の私に対する扱いは、壊れ物を扱うように繊細だ。

 それがやっぱり、なんだか可笑しい。

 だからと言って、女を知らない人では無かったと言うのも分かってきた。

 多分、彼の方は私がはじめての相手ではない。

 最中、私達の間に言葉のやり取りは一切無い。

 身体が繋がっていると共に、思考も接続されているような錯覚さえ感じるほどに。

 これって、ある意味で戦闘と同じでもある。

 仲間との連携、あるいは、決闘相手との読み合い。

 この男と出会って、これまで4タイトルのゲームを共に駆け抜けてやって来た事と、コレは同じだったのかもしれない。

 実際、ロマンススキルを抜きにしても、私達のアナログなチームワークもかなり強化されたように感じている。

 それも、HARUTOハルトだけではなく、他の仲間……あの、“戦う”事しかしない偏屈オヤジのKAIカイですら、何を考えているのかが、分かるようになってきた。

 

 決戦は近い。

 ロマンススキルの開発も急いで進めていた。

 

【リィンカーネーション(★9)

 パーティ全員に、一度だけ自動蘇生が付与される】

 

 要するに、全体リレイズだ。

 物凄く強力な効果に思われるかもしれないけど、

 そもそも蘇生魔法自体、このゲームの戦闘システム的に、おいそれと乱発出来ない。

 HARUTOハルトが個人で持っている、単体を生き返らせる魔法も★9を消費する。

 そのターン、蘇生以外のスキルがろくに使えず、一人を復活させる為の隙で余計に畳み掛けられる事もあり得るのだ。

 それに、ロマンススキルである関係上、そのターンは私とHARUTOハルト、二人の手が塞がるのも痛い。

 敵からすれば、タネが分かれば私かHARUTOハルトを二回続けて殺そうと動くだろう。

 まあ、だからこそ無詠唱・反動無しと言う設定でも★が9以内に収まったのだけど。

 ただ、通常の蘇生魔法と違って「死ぬ前に掛けておける」と言うメリットは大きい。

 ★は魔法自体のターンに先払いされているので、生き返るターンにジリ貧となる危険は少ない。

 また、これからは競合種よりも対人戦が主となる。

 どんな根性のひねくれた初見殺しスキルが飛んでくるかわからない、と考えると、全滅を確実に一度は防げる意味は大きい。

 戦いの真髄は通常の“戦う”にある、と言うKAIカイ理論も、私達の中でだいぶ板についてきた。

 一度殺されたとしても、このリィンカーネーションを再度掛け直す為に持ちこたえる事も、難しくは無いだろう。

 後は、同じくらい消費の重いアルス・マグナとどちらを優先すべきかの判断が課題かな。

 

 

 

 さて。

 今しがた、このリィンカーネーションを実戦導入して来た所だった。

 次回も、私が解説する事になりそうだ。

 当たり前だけど、ロマンスシステムを使っているのは私達だけでは無い。

 いずれは、敵としても出会うのは必定。

 ただ、まさか初のロマンス持ちの敵がでやってくるとは。

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