番外編『単語を書けるが、文章を書けない』

 根本的に文章が書けない人間が存在する。

 そんな人たちは、結構な頻度で……。


「単語は書けるんです。でも文章が書けないんです!」


 と、言うのである。

 その理由は様々考えられると思うが、最初から美しい表現や気の利いた言葉を作ろうと躍起になっていると考えられる。

 次から次へとそんな表現ができればいいのだが、世の中甘くない。

 というわけで——。


 そんな悩みを抱える者へのアドバイスを残しておきます。


——アイデアはシンプルに考える——


 この考え方が、実は文章の作り方にも当てはまります。


 結局な話——。


 文章というのは、単語の羅列です。

 そして、単語が思いつけば、文章は書けるものです。


 例を出せば……。


『桜』『綺麗』『少女』『サッカーボール』『ベンチ』『公園』『花見』


 こんな感じで、書きたい文章に登場する『単語』を書いてくれ。

 とりあえず、ぐわああああああああと並べるだけでいい。

 その後に、取捨選択をして、本当に使うか使わないかを考えるのだ。


—————————————————————————————————


 卒業シーズンを終え、入学シーズンに近付いた三月下旬。

 彼女も友達もいない俺は自堕落な春休みを過ごしていた。

 毎日家でゴロゴロしていては母親がガミガミとうるさい。

 だから、俺は近所の古本屋へと向かったわけだ。立ち読みしようと。

 その途中、公園を通った。子供の頃から遊んでいた場所だ。


「うわぁ……これは凄いな」


 満開の桜が咲き誇っていた。

 近所の住民が集まり、花見をしているのだ。

 昼間からお酒を飲んでいるあたり、良いご身分だ。


「ん?」


 ひらひらと桜の花が舞い落ち、俺の頭に乗ってきた。


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 みたいに考えればいいんだけど……まぁ〜分からない人もいるわな。


 というわけで——。


①単語を考える

②単語を組み合わせ、簡単な文章を作る

③簡単な文章を複雑な文章へと変える


 基本的には①から考える必要はないと思う。

 普通の文章を書く分には、②からのステップでいい。

 ①から考えるのは少々小難しい表現をする場合だね。


②俺は歩いた。俺は走った。俺は泳いだ。


 これぐらいは皆様も書けるでしょう?

 その後は、これを複雑な文章に書き換えるのみですよ。


『俺は走った』


 どうして走るのでしょうか?


——遅刻寸前だから——


 遅刻寸前ということは、どんな格好ですか?


——髪は鳥の巣みたいで、空腹もあるし、眠り眼——


 嫌な予感がした。そして、その予感は的中した。

 ベッドから飛び起き、俺は目覚ましを確認する。

 時刻は8:20分。あと、五分でスクールバスが来てしまう。

 眠気眼のままに服を着替え、カバンを手に取った。

 その後、勢いよく家を飛び出し、俺は全力でバス停まで走った。


◇◆◇◆◇◆


 単語が思いつくけど、文章が書けない人は想像力が足りないと思う。

 もしくは、美しい文章を書こうと躍起になっているパターンか。

 ともあれ、考え方はシンプルに。どんなときでも。


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作家から


——文章技術編——文章を書く——完結


 皆さん、今までお疲れ様でした。

 ここまで本当に読んでくれてありがとうございました。


第一章『自己研究編——自分の強みと弱みを知る——』

第二章『アイデア編——面白いへと作り替える——』

第三章『ストーリー構築理論編——起承転結を生み出す——』

第四章『文章技術編——文章を書く——』


 今までの話を通して、私は分かりやすく説明したつもりです。

 ですが、この話を聞いても——。


「コイツは何を言ってるんやろ? マジで時間の無駄やったわ」


 と思うかもしれないし……。


「コイツが言ってることは当たってるかも。ちょっと真似したろ!」


 と思うかもしれません。


 でも、それでいいと私は思ってます。


 正直な話……。


 この話を全部聞いて——。


「ほほ〜ん、なるほどな……これ使ってやろッ!」


 と思う人は、山のようにいるかもしれない。

 

 ですが、本当に私が言っていることを理解して実践できる人は——。


 100人中2〜3人ぐらいやと思ってます。


 ぶっちゃけると、私はその2〜3人のためだけに書き上げました。

 というか、今まで長々と説明を繰り返してきました。面倒だったけど。


 その2〜3人が、私と同じく小説を愛する人間だと確信して。

 だけど、私と同じく何度も何度も小説の筆を折って。

 それでも、小説を書きたい気持ちだけは治らなくて。

 そして、困りに困り果てた結果、ここに辿り着いた人のために。


—————————————————————————————————


次回『本当に役に立った創作本』を語ったら、今作はおしまいです。


 それでは、また次回でお会いしましょう。ではではッ!!

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