大文字伝子が行く98

クライングフリーマン

大文字伝子が行く98

 青木君誘拐事件から2日後。午前10時。喫茶アテロゴ。

 「青木君、ショックだったろうなあ。大丈夫かな?」と物部が言うと、「今朝、本人からLinenメッセージが届いたよ。軽率な自分に反省して、帰宅した両親に全て話したそうだ。で、改名のし直しをして、お名前カードも作成し直したそうだ。何せ、住民票のデータが変わる訳だから。」と伝子が応えた。

 「お名前カード、自動的に変わらないの?」と栞が尋ねるので、「まだまだ、そんな所まで行かないでしょう。ひよっこシステムですから。今後の課題ですね。レアケースではあるけれど、逢坂先輩の言うように、修正の自動化もしていかなくてはね。今後の課題ですね。」と高遠が言った。

 「お前、偉そうだな。」と物部が言うと、「物部、偉いんだよ、ウチのダーリンは。」と、伝子が応えた。

 「熱いなあ。エアコン壊れたかな?」と、物部は空とぼけた。

 辰巳と栞がクスクス笑っていると、団体客が入って来た。「じゃ、物部。帰る。」

 伝子は勘定を済ませると、高遠とモールを歩いた。

 「モールでも、色んな事件があったなあ。」と、高遠が言った。

 「そうだな。」「僕は、伝子とあつこ警視となぎさ一佐が、揃って火事の現場に飛び込んだのが一番の思い出だな。」「あの店どうなった?」「今は確か文具屋さんだね。女子高生が多いらしいよ。」

 言っている内に、その店の前に辿りついた。シャッターが閉まっていて、女子高生達が立ち話をしている。

 「どうしたの?」と伝子が尋ねると、「開店時間とっくに過ぎているし、定休日があすなのに、変だな?って言ってたんです。」と女子高生の一人が言った。

 「君たち、学校は?」と、高遠が言うと、「今は試験中。今日は午後からです。」と他の女子高生が応えた。

 「誰か電話番号知ってる?」と伝子が尋ねると、レシートを差し出した女の子がいた。

 電話番号が印刷されている。

 伝子は電話してみた。呼び出し音だけで、出ない。伝子は愛宕に電話をした。

 「分かりました。今から向かいます。」という返事を聞いて、伝子は電話を切った。

 「今から、警察が来る。もしもの事があるからね。」と、伝子が言った。

暫くして、愛宕と橋爪警部補がやって来た。「先輩。これは?」

 「中で物音がする、って言うんでね。こじ開ける訳にはいかないし。」と言う伝子に、「先輩、裏口から覗いたりしてませんよね。」「勿論だ。」

 そこへ、本店店長が、ミニバイクでやって来た。女性店長は、「変ですねえ。支店長は几帳面な方と伺っていますが。」と、橋爪に言った。

 「伺って?」「ああ。私は最近本店店長になったんです。以前は社長秘書でした。」本店店長は名刺を橋爪、愛宕、伝子に渡した。

 本店店長の睦月摩耶がシャッターを開けると、中央に男が倒れていた。

 橋爪が、「支店長ですか?」と言いながら、死体をざっと検分した。「アーモンド臭?」

 「いいえ。支店長じゃありません。お客かしら?」と睦月は言った。

  持ち物を調べた愛宕は、「大変だ。橋爪さん。先輩。」と言った。

 手招きされた伝子と、橋爪が、愛宕の手元を覗き込むと、お名前カードがあった。

 橋爪が言った。「シンキチ、か。」

 午後1時。EITOベースゼロ。会議室。

 理事官は言った。「被害者の名前は最上紫雲吉。難しい当て字だな。兎に角、『シンキチ』だ。それで、EITO案件だ。と言っても、もう亡くなったから、真相の事後調査ということになる。行方不明の支店長の名前は高島軍平・・・。」

 写真を見た伝子は叫んだ。「高島!」「何だ、知り合いか?」

 理事官の問いに、「後輩です。大学翻訳部の。」と、伝子が答えた。

 「理事官。やはり、いなくなった支店長が容疑者か参考人でしょうか?」あつこが尋ねた。

 「恐らくはな。睦月店長によると、顧客名簿は予約の客に限るそうだ。ガイシャの名前はお名前カードで分かったが、その名前は顧客名簿にはない。常連かどうかは分からないが、予約はしたことがないのだろう。女子高生に愛宕が確認しているが、見たことのない男だそうだ。今は、この程度しか分かっていない。社長の知り合いの線は?と思って橋爪警部補が問い合わせに本社に行ったが、社長も知らない、と言う。取り敢えず、警邏は増やしたが、犯人が戻る可能性は少ないかもな。」

 「ガイシャの家に、結城警部とみちるが行っています。」と、あつこが言った。

 「とにかく、これがもし、です・パイロットが関わっているようなら、何か言ってくるだろう。支店長は公開捜査になり、久保田管理官が今、記者会見を行っている。飽くまでも、参考人としてな。です・パイロットが関わっているとすれば、命の危険がある、と強調して、目撃情報を募っている。」

河野事務官が走って来た。「反応がありました。今回はテレビ1ではなく、警視庁宛てにメールが届きました。」

 ディスプレイに、です・パイロットからのメールが映った。

 《私の留守中に殺人事件が起きたようだが、殺されたシンキチは、見付けられなかったシンキチの一人だ。意外だったよ。つまり、我々はえん罪だ。まだ『作戦』は実行していないからな。犯人の処分は任せるよ。皆様のです・パイロット》

 「この文面が正しいとすれば、警察に差し戻し、だ。」理事官が言うと、「正しいとすれば、ですよね。」と、なぎさが言った。

 「勿論だ。まだ、死体が発見されたに過ぎない。とにかく、今日は一旦解散だ。連絡を待て。」

 午後2時。伝子のマンション。

 「色んな意味で、珍しいケースだね、伝子。」「うん。です・パイロットは、最終決戦の準備を始めているのかも知れないな。」

 「高島が絡んでいるとなると、我々にも無縁じゃ無いな、大文字。」と、スマホから物部の声が聞こえた。

 「ああ。編集長の事件以来、まともに働いていたようだな。犯人でないことを願うよ。」

 その時、EITOのPCが起動した。

 伝子と高遠は慌てて移動した。「休憩中に悪いな。大文字君。解散した後、大町が 大変なことを発見した。本人から報告させよう。」

 理事官に代わって、大町が画面に出た。

 「アンバサダー。シンキチが見つかり難いパターンがまだありました。引っ越しです。」「「引っ越し?」「先日、同級生が引っ越しの時にいちいち転出届出して、転入届出すのって不便なのよねえ、って言ってたんです。お名前カードで、どう手続きが変わって行くのか知らないけど、お名前カードの情報が流出した直後に引っ越した場合、敵も把握出来ない状態かも知れません。」

 「そうか。『見付けられなかった一人』と、です・パイロットも言ってたな。会社員ならともかく、学生ならあり得るな。区役所、いや、都庁の転出データか。」

そこで、理事官が代わった。「そこで、都庁に協力を申請したが、個人情報がどうたら、とあのオバハンは断ってきた。前に助けてやったのに恩知らずだ。」

 「困りましたね。」「いや、副総監から圧力をかけて、特定した。学生が二人、そのパターンで、お名前カードを作った後、最初の事件が起こる前に大阪に転出していた。すぐに、大阪府警に連絡、南部興信所と中津興信所に協力依頼、EITO大阪支部にも出動命令を出した。応援を送るかね?」「では、なぎさと金森を送って下さい。私もEITOに移動します。オスプレイの手配をお願いします。」

 高遠と伝子は早速準備にかかった。

 同じく、午後2時。中津興信所。

「じゃ、行ってきます。」中津健二と、新人里中充が出発した。

同じく、午後2時。南部興信所。

「いよいよ、出番でっか、お嬢。子分引き連れて。」と幸田が総子を揶揄う。

 「人聞きの悪いこといいなや。あんた、EITOのこと言いふらしてないやろな。極秘事項やで。」「分かてますがナア、所長夫人。」「感じわるぅ。」

 「まま、激励やと思っときましょ。取り敢えず、保護せなな。ほな、豊中市の五月清吉方は幸田さんと所長に任せて、わしらは東大阪市の奥村新吉の方に行きますか。横山に連絡しといたから、現地で落ち合いましょ。」と、花菱は言った。

 2人は急いで興信所を後にした。

 午後3時。奥村新吉が借りているアパート、藤田荘。

 「ええ?そんな馬鹿な。だって、狙われているのは、東京の『シンキチ』でしょう?」

 奥村は抗議をした。「ええ。ご説ごもっとも。今のところ可能性です。です・パイロットから通信があった訳やない。でも、何も無かったら、笑って済むやないですか。受験控えているんでしょ?ほんの2,3日でいいんですわ。護衛させて下さい。」

 横山は花菱と息を揃えて土下座をした。総子は慌てて、2人に習って土下座をした。

 30分後。漸く奥村を説得し、総子達は張り込みに入った。

 「すんません、横山さん。」と総子が言うと、「亀の甲より年の功って言いますやろ。花ヤンとは長いこと相棒しとったさかい、息ぴったりでっしゃろ?」と、横山は笑った。

 午後3時過ぎ。南部と幸田は、五月清吉が借りているマンションに着いた。

 「五月さん?一昨日出掛けたんと違うかな?何かあったんですか?興信所の方と警察の方4人も来られるなんて。」南部は、同行した早見警部と相談の上、管理人に部屋を開けて貰った。そこには誰もいなかった。だが、冷蔵庫に貼り紙があった。

 《てんぞうし公園。4時位。荷物取りに来い。》

 五月が普段使っているPCで書き、プリンターで印字したに違いない貼り紙だった。

 「幸田。一足違いかも知れんな。こっちに向かってる中津さんに連絡してくれ。」と、南部は難しい顔をして言った。

 同じ頃。新幹線の中。中津健二は、南部興信所からの電話は入ったので、デッキに出て応対した。「誘拐・・・ですか。」

 同じ頃。EITOベースゼロ。

 理事官は南部からの緊急連絡が入ったので、応対した。「誘拐・・・ですか。こちらも誘拐です。」

 10分後。オスプレイの中。

 伝子は、理事官からの連絡を聞いた。「君たちは、そのまま葡萄館に向かってくれ。2組の使い魔が動き出したのか、陽動かは分からないが、大阪の事は大阪支部に任せよう。」

 一緒に聞いていた、みちるが伝子に尋ねた。「おねえさま。本当に大丈夫なの?」

 「なぎさと総子と金森だけじゃない。新しく作られたEITOエンジェルズのお手並み拝見だな。」「EITOエンジェルズ?元ヤンキーなんでしょ?ピンと来ないなあ。」

 「あと10分で到着です。」とジョーンズが機内放送で言った。

 10分後。葡萄館。

 本来は、アイドルのライブコンサートの予定だったが、柳生官房長官が誘拐され為、中止。広い会場の中央ステージにはベッドが据え付けられ、長官が縛り付けられていた。

 メールは警視庁宛にではなく、テレビ1に届けられた。そこで、伝子はなぎさ達以外で対応することにした。

 ステージに近づくと、ベッドの周りにいた一団のリーダーが言った。

 「大阪はどうした?」「何のことかな?」「逃げ出した学生のことだよ。」

 「何を言っているのか知らないが、長官を返して貰いに来た。」伝子が言うと、 「じゃあ、力ずくで奪ってみなよ。」と。リーダーは言った。

 伝子が見渡すと、ざっと見渡すと、500人位いた。

 午後3時45分。大阪。天王寺公園。

 「総子。あっちの『シンキチ』は?」

 私服の総子は言った。「横山刑事と花菱さんが警察署に預けに行った。あっちは大丈夫やろ。」

 「一佐と金森さんが、こっちに向かっている。あ。あれかな?」オスプレイが近づき、なぎさと金森がするするとオスプレイから降りて来た。

「お久しぶりです、南部さん。」なぎさが挨拶すると、阿倍野側から到着したトラックからエマージェンシーガールズが降りて来た。

 「あれ?東京から援軍でっか?一佐。」南部が首を傾げてなぎさに尋ねた。

「違う。違います。おねえさま達は、官房長官の誘拐事件の為、こっちに来れないと通信が入りました。」

 「なるほどなあ。那珂国人は物真似が得意やけど、どこか不良品とか聞いてる。こいつらも・・・。」

 「井戸端会議。おわたか?お前ら、わたしらの餌。わかったか?」エマージェンシーガールズ姿の一団のリーダーが言い、「クレーンの男を助けたければ、鬼ごっこするわたしらを倒すことだ。」と、天王寺公園近くの建設中ビルを指した。

 ビルの屋上にクレーン車が止まっているが、何故かビルの外側にアームが伸びている。そして、アームの突端には、人がぶら下がっている。

その時、電動スケーターで四天王寺側からやって来た一団があった。「ちょっと、待ったあ。」

 一団のリーダーが言った。「EITOエンジェルス、参上!!満を持して。」

一団は、腰を折り、まるで時代劇かなんかの『渡世人』のようなポーズを取った。

なぎさは、咄嗟の判断で、「ここは任せた。南部さん。我々はクレーンの方に行きましょう。」と、一団に言い、南部に言った。

 なぎさ、金森、南部、幸田は、ビルに走った。走りながら、南部は花菱に電話をした。

 EITOエンジェルスと、偽エマージェンシーガールズの闘いが始まった。

 人々は慌てて天王寺公園の外に出た。

 時刻は午後4時を過ぎていた。

 東京。警視庁。久保田管理官の部屋。

 副総監が久保田管理官と話している。村越警視正が入って来た。

 「副総監。管理官。文房具店の殺しは、本店店長の仕業でした。みゆき出版社編集長山村の所に、行方を眩ましていた高島軍平が駆け込んだんです。高島の証言により、文房具店本店店長の睦月を逮捕。全て自供した、と今柴田管理官から連絡が入りました。睦月は、公安でもマトリでもマークしていた人物で、輸入文房具に混ぜて麻薬を密輸していたようです。高島は遅くまで残業をしていたが、こっそり入って来て揉めた睦月の犯行を目撃したそうです。で、一旦、隣のビルの物置に隠れてから逃走。あてもなく彷徨っていたところ、既知の編集長のことを思い出し、相談したそうです。大文字さんの後輩だそうですが、直接大文字さんに助けを求める勇気が無かった、とも言っています。」

 「やっと、1件片付いたな。それで、その大文字君は?」と、副総監が尋ねた。

 「今、葡萄館にいます。大勢の敵と戦いの最中です。」と、久保田管理官が言った。

 午後4時過ぎ。大阪。島田ビル屋上。「私が突端まで行って、彼を固定します。副隊長はクレーンの操縦をお願いします。」

 そう言って、金森はクレーンのアームをよじ登り始めた。クレーンの時限装置は幸いない。不安定な格好でアームの突端に括られている、五月清吉は文字通り「風前の灯火」だった。

 島田ビル一階では、横山と花菱と幸田が、他の警察官と共に必死で野次馬、いや、人混みの整理をしている。

 「中津さん、建築会社と連絡取れました。今、こちらに向かっています。」と、南部は中津健二に言った。

 「こちらも、理事官に連絡が取れました。大文字さん達は、官房長官誘拐の犯人からの指名で、葡萄館に行っています。こちらは南部さん夫婦と橘一佐達に任せるそうです。」

 「了解しました。」南部は、新幹線の中の中津との電話を切った。

 一方、天王寺公園では、各地点で、偽物エマージェンシーガールズとEITOエンジェルスの死闘が続いていた。元レディースのEITOエンジェルスは、「突っ張り棒」を巧みに操り、シューターを弾いて敵に当てるなど、普通では考えられない戦法で敵に対峙していた。

 同じ頃。東京。葡萄館。

 工藤率いる白バイ隊、筒井、夏目、青山のエレガントボーイによるホバーバイク隊、後方支援の副島、田坂、安藤の弓矢隊が、そして、伝子とあつこのコンビネーションのブーメランが、徹底して敵の銃火器を散乱させた。増田、大町、馬越、早乙女、結城、あかり、浜田、日向、飯星のエマージェンシーガールズは、シールドを片手にサバイバル電磁警棒で闘った。

 彼らが闘っている所から、かなり離れた所で、吹き矢ボウガンを構える女がいた。

 その女のボウガンを稲森が投げ縄で弾き飛ばした。江南の合図で、犬のサチコとジュンコが女に飛びついた。

 更に離れた所で、見ていた男が立ち去ろうとすると、「そうは行かにゃあでよ。おみゃあさんには、たんと聞くことがあるで、署でじっくり聞かせてちょ。」と、橋爪警部補が立ちはだかり、愛宕が手錠をかけた。

 「一体、何の容疑で?」と惚ける男に「公務執行妨害かな、取り敢えず。」愛宕は言った。

 大阪。天王寺公園。時刻は4時半になっていた。

 人々は自主的に外に出て、電動スケーターでやって来た一団が、EITOエンジェルスの救援に入った。皆、揃いの妙な法被を着ていたが、素手で敵に向かって行った。そのリーダーらしき女が、EITOエンジェルスの格好に着替えた総子の近くまでやって来た。

 「助太刀するぜ、ホワイトの大総長さんよ。」「え?あんたらが誰だか知らんが助かるわ。おおきに。ありがとう。」

 総子はリーダーに礼を言い、メダルガンでメダルを撃ち、敵を攪乱させた。

 同じ頃。あべのハルカス。

 双眼鏡で、あちこちを見ている男がいた。

 「何が見えますかな?」剣道着に袴を履いた天童が男に声をかけた。天童は長波ホイッスルを吹いた。

 「あんたは何者だ?」「正義の味方・・・とでも言っておきますかな?」

男は拳銃を出し、逃げようとした。だが、天童は怯まなかった。

 「老い先長く無いのでね。鉄砲なんか怖くはないねえ。」男は天童を撃とうした。

 「そこまでだ。」警察官の制服姿で現れた男が言った。警官隊と共に来た警備員が天童に言った。

 「警視庁の久保田警部だ。殺人未遂じゃ、言い逃れ出来ないよな。」警備員は、天童の友人の剣士、松本だった。

 久保田警部は天童と松本に一礼すると、警官隊と共に去った。

 「確かに、いい眺めだ。クレーンの方は、片付いたようだよ。」

島田ビル屋上。なぎさが金森とクレーンから『シンキチ』こと五月清吉を降ろすと、    救急隊員と、建設会社作業員が上がってきた。

 救急隊員は、五月清吉をストレッチャーで連れて行った。

 「さて、合流しますか、副隊長。」と、金森が声をかけると、「総子ちゃんのことだから、もう片付けているかもね。」と、なぎさは笑った。

 天王寺公園。

 なぎさ達がやってくると、エマージェンシーガールズ姿の女達が顔の覆面を外され、一カ所にのびていた。

 「なぎさねえちゃん。掃除ならもう終ったで。」「ありがとう。シンキチは助けたよ。それにしても、その格好・・・。」

 「理事官のオッチャンに特別仕様にして貰ったんや。お陰で偽物と本物の間違いなしや。」警官隊がなだれ込んで来て、敵の一団を連行していった。

「あなたは、本物の、おねえさまの従妹よ。」と、なぎさは総子の頬に頬ずりした。

 東京。葡萄館。

 闘いは終っていた。伝子は総理に電話をした。「速やかな避難指導ありがとうございました。敵の使い魔も捕らえました。」

 警察犬隊、バイク隊、ホバーバイク隊、弓矢隊は全て撤収していた。

 警官隊も、最後の連行が終ると、伝子に敬礼をして帰って行った。

 あつこも、伝子に合図して、他のエマージェンシーガールズと帰って行った。

 伝子は、総理との会話を終えると、EITOの理事官に報告、DDバッジを押した。

そして、夫の高遠に電話をしながら、葡萄館から出ていった。

 静寂が、あたりを支配し始めた。ベッドの官房長官が呟いた。

 「忘れてるよー。」烏の鳴き声が聞こえたような気がした官房長官は再び呟いた。

 「ハンターチャーンス!!」

―完―

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