第4話
それから長い歳月が流れた。
ディットの体の水色の輝きは消え、紺色と水色の不思議な模様が全身を覆っていた。
いつも通りに海面近くで微生物を食していると、
「ディットじゃないか!」
と思念波で驚きの声が聞こえた。
声がする方を見ると同じ位の体の魚影が近づいて来た。
「おおエルン、生きていたのか!」
姿は変わってもディットにはエルンだとすぐにわかった。
お互いに再会を喜んだ。
「あの後、どうしたんだ」
ディットが訊くと、
「何とか逃げたが泳げなくなって休んでいたんだ」
とエルンは穏やかな口調で答えた。
エルンの尾ひれが破れたように裂けていた。
「そうだったのか。呼びかけても返事はなかったからもう駄目かと思っていた。すまない」
ディットは目を閉じた。
「謝る事はないさ。お互いにそう思っていたってだけだ。あれから泳ぎ回っていたら仲間を見つけたんだ。今は子供がいて更に子供の子供の子供……ああもう面倒臭いや。子供が沢山いるんだ」
エルンは明るく答えた。
「おお、良かったじゃないか。お前は仲間が欲しかったもんな」
「どうだ。会いに行くか。ここから結構泳ぐが」
「いや、いい。お前が幸せなのがわかって安心したよ。俺はこの下に住んでいるんだ。前と似たような感じだ。お互いに長く生きたな。俺はのんびり生きているよ。じゃあまた会おうな」
ディットは目を細めてエルンと別れた。
「本当に長く生きたもんだ。これからどの位生きるのだろう」
光の届かない海溝を潜りながらディットは考えた。
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