第3話

 ある日、海底が大きく揺れた。

「何だ!」

 横穴にいたディットが驚いた。

「危ないぞ!」

 エルンが言った途端、岩が崩れて落ちてきた。

 ディット達は急いで横穴から出た。

 その後すぐに横穴の入口が岩で埋まった。

 沢山の魚が上へ泳いでいった。

「下から熱くなってきたぞ!」

 エルンが叫ぶように思念波で伝えた。

「わかっている。急ぐんだ!」

 ディットが叫んだが海中で響く地響きでエルンに伝わったかわからなかった。

「エルン、聞こえるか!」

 ディットが叫んだがエルンの声は聞こえなかった。

 海底から泡があちこち立ち昇ってエルンの姿が見えなくなった。

「エルン!」

 ディットは叫んだがエルンの返事はなかった。

「くそっ!」

 ディットは海溝の裂け目から出ると泡の柱の合間をくぐって直進した。

 海底火山が噴火して海中は濁り、逃げ遅れた魚は熱とガスで死んだ。

 ディットは何とか逃げきってどこかわからない岩の間に身を寄せて休んだ。

「エルン、生きていてくれ」

 ディットは呟いて眠りについた。

 寝床を失ったディットはオレンジの輝きが差し込む海の中を何日も彷徨い続けてある海溝の奥へ潜った。

 前に住んでいた所より深く暗かった。

 他の魚が近づかない横穴に入ると小さな空洞に出た。

「ああ、ここがいい」

 水の流れが殆どない静かな空間をディットは新しい寝床にした。

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