遭難し南の島に漂着した『僕』と、彼を見つけた少女・ナハのお話。
遠い異国の島を舞台にした、恋愛ものの掌編です。
まさに真っ向からの恋愛劇。
「トロピカル」「因習」をモチーフにしながら、しかしコメディ的な要素の一切を排して、きっちり物語に集中させてくれるところがもう最高でした。
わずか5,000文字というコンパクトさでありながら、物語が主人公とヒロインふたりの関係に留まらず、もうひとりの少年が登場するのが本当に大好き。
ウレという名の少年、むしろ彼あってこその本作。
こういうのも三角関係と言うのか、彼と主人公との内心の距離感みたいなものが、もう本当に胸に染みるというかいろいろ掻き乱してくれます。
ここではこれ以上は語りませんが(ネタバレになるので)、きっちり因習しているところも好き。
とても素敵な物語でした。