0-1 序章
「これは事故ではありません。殺人です」
そう言ったのは
本名は
天才的な頭脳を生かして様々な難事件を解決し、この狩場・梅川で知らない人は居ない。
俺、
紅梨さんは右目にやや掛かっている水色の髪を手で流す。
「だ、だが、全員にはアリバイもあるし、もし他殺だとしても容疑者たちではないんじゃないか?」
そう問いかけるのは刑事の
彼は紅梨さんと面識がある刑事だ。
「確かにそうですね。だけど普通ならそうしないことが含まれてませんか?例えば結婚式パーティーのスピーチの少し前に電話とか」
相川さんにそう問いかけたのは
彼女も狩場・梅川で有名な探偵だ。
背中を沿うように伸びた黒髪を払う。
「そうは言っても・・・・・・。実際に一番事件現場に近い人でも20キロは離れてるんだぞ?」
「でも、もし前日に仕掛けられてたら?」
そういったのは
少し小柄だが、大の大人を投げ飛ばす力を持ち合わせている。
彼女を俺は昔からの愛称でサーチエクスペンシブと呼んでいる。
サーチエクスペンシブはそのボーイッシュの髪をポリポリとかく。
「昨日、ここに来たといいましたよね・・・・・・新庄さん」
「あぁ」
新庄さんに直接聞いたのは
彼は俺とサーチエクスペンシブの旧友で、頭脳と力を掛け持ちしている。
「その時にあるものを仕掛けたんですよね?」
紅梨さんは新庄さんに訊く。
「いや、何のことだか」
「出来たよ、閑華さん」
やって来たのは
1年前のGWで紅梨さんが助け出した人。
彼女は少し精神年齢が幼い。
が、しっかりしているところもある。
髪はツインテールで、紅梨さんの付き人みたいな所がある。
「出来ましたか。ありがとうございます」
「一体何が出来たんだ?」
「それは見てのお楽しみってことで」
紗弥さんは現場に入っていく。
「まずは、3m位の紐を用意します。それの先から1キロ位のおもり、何でもいいんだよね?」
「はい」
「それを通したら両端を持ちながらおもりを台所の排水口に入れる。そしてそのまま両端を持ってリビングまで行く。そしたら片方を電話の受話器に挟む。その時に取れないように軽くテープで止める。そしたらもう片方を電話の真上にある照明に引っ掛けてそこに凶器のおもりを付けておく」
「それでどうすると言うんだ?」
「そして自分がアリバイを作っている時に、電話をかければどうでしょう?」
「ま、まさか」
「えぇ。電話で軽くしか止めてない糸が巻き取られておもりが電球から落ちる。そして撲殺される。その後、巻き取られた紐はそのまま排水口に入る。なぜなら、1キロの重りに通した輪よりも電話に繋いだ端の紐を太くしておけば見事、入るんです」
「よし、排水溝を調べろ」
「ハッ」
と、その時。
新庄さんが玄関に向かって走り出した。
「あ、待て!!」
「クソッ」
と、玄関に居るのは先程までは居なかったサーチエクスペンシブ。
「どけぇ!!!」
新庄さんはその巨体を生かしてパンチを繰り出す。
が、サーチエクスペンシブは見事顔を右に動かすだけで避ける。
そしてこの後は誰でも想像できる展開だろう。
「僕に向かってくるとはいい度胸だね。喰らえ!!」
サーチエクスペンシブが新庄さんの手を持って一本背負いを決める。
「グハッ」
そして駆けつけた警察官に手錠をかけられて連れてかれた。
「お手柄だったな石川」
相川さんは紅梨さんにそういう。
石川、というのは探偵業務の偽名。
石川YUZUとして活動している。
「いえ、今回は水無瀬さんのアシストがナイスでした」
「そうか。これからも頼むぞ」
相川さんはポンッ、と紅梨さんの肩に手を置く。
が、その手を紅梨さんは持って見つめ返す。
「残念ですが、私はこれを最後の事件とさせていただきます」
「・・・・・・どういうことだ?」
「私は先日の事件で多くの死者を出してしまいましたので、探偵には向いてないんです。ですから引退させていただきます」
「そこまでか?」
「えぇ」
「そう言うならその意見を俺は尊重しよう」
相川さんはそう言うと、家の外に出る。
「では、またいつか会おう。石川、いや安城」
そう言って相川さんは車に乗って去って行った。
「それなら、閑華さんの引退祝いで皆で何処か食べに行こうか」
「そうだな。僕も食べたいものあるし」
「お前が食べたいだけだろ」
「ハハハ」
軽口をたたきながら俺らは歩き出した。
◆
レストランにて。
「そう言えば、サザンクロスさんの新刊出たんだって?」
「えぇ。結局間に合わない間に合わない言ってましたけど」
今話題してるのは紅梨さんの姉、
彼女は今年短大を卒業した、現役の有名な漫画家だ。
「水無瀬、幸雄さんは元気か?」
「えぇ。壊れるくらい」
よくわからないが、水無瀬の兄、
彼は今年から大学生だ。
取り敢えず元気で何より。
「なぁ、サーチエクスペンシブ」
「なんだサードライン」
サードラインというのは川中大和の別称。
俺はルーズセルと呼ばれている。
「この前の例のことについて後で話そう」
「絶対にやだ」
こういうときは、大抵サーチエクスペンシブの八つ当たりだ。
「またかよ。サードライン、頑張れ」
「他人事かよ、お前もどうせサーチエクスペンシブのサンドバックだろ?」
「うるせぇ」
そういいながらサーチエクスペンシブを見ると、うんうんと頷いていた。
どこか頷く要素、ありましたかねぇ。
≪To The Next Story...≫
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