2-3

GW初日。

俺は狩場帝国ホテルに向かっていた。

ちなみに陽菜には知り合いと遊びに行くと言ったら、勝手に紅梨さんと決めてたけど。

指定された場所に着くと、この前交換した連絡先に連絡を入れる。

すると、3106号室で待ってるとのことだ。


「・・・・・・ぁ」


部屋の前に行くと、洸さんが待っていた。

しかしまぁ、よくもスイートルームなんか取れたもんだよな。


「えっと・・・・・・」

「・・・・・・取り敢えず入って・・・・・・遠慮はいらない・・・・・・」


とはいいますけどね。

まぁ、物は言いようか。


「それじゃぁ、失礼します」


挨拶をして入る。

洸さんが奥へと案内してくれる。

案外親切なんだな。


「・・・・・・そこ、座って」


指示されて座る。


「知ってるかもしれないけど、私は一ノ瀬洸。呼び捨てで洸で良い」

「ぇ・・・・・・っと、い、一ノ瀬、い、泉水・・・・・・で、す」

「無理しないで。こっちは泉水。泉水って呼んで頂戴。それと・・・・・・」

「吃音症、だろ?」

「・・・・・・し、しって、ぃるの?」

「あぁ――――吃音症ってのは言葉が円滑に話せない障害で、話を始めるときに最初の一音が詰まったり同じ音を繰り返したりする言語障害のことだろ?」

「・・・・・・凄い」

「えっと、それで本題なんだけど」

「その前に叔父さんはどうして探偵をやってるのか聴かせて」

「そりゃ、公の秩序を守るため、じゃないかな」

「・・・・・・間違ってはない。でも、大きな間違いがある」

「え?」

「この世の中はもう腐り果てている」

「どうしてそんなことが・・・・・・」

「日本の公安警察でさえ人を簡単に殺す世界だよ?」

「そう・・・・・・なの?」

「そう言えば叔父さん、この前は刺してごめんなさい」

「え?」

「(ここまで鈍感とは・・・・・・。)本題に入ろうか。叔父さんが訊きたいのはInformation Assassin、でしょ?」

「え?」


なんで知ってるの、と言いかけて言葉を飲み込んだ。

洸の右手には4つのUSBメモリが握られていた。


「・・・・・・これ、何だと思う?泉水、PC」


俺が返答に困っていると、泉水がPCを持って来る。

洸が1つのUSBを刺す。


「みて。叔父さん」

「え?これって・・・・・・」

「御名答。日本の公安警察のデータ」


ん?

待てよ。

Information Assassinを知っている時点で薄々勘付いてはいたが・・・・・・。


「もしかして君等が・・・・・・」

「そうだよ。私と泉水はInformation Assassin」


どうするんだ?この状況。

俺が知ったからには消されるという未来が見えてる。


「でも叔父さんには知っててほしかった」

「どういうこと?」

「・・・・・・仲間こっちのエリアに来ない?」

「え?」


予想外のセリフに俺は一瞬迷う。

仲間になれって?


「こっちのエリアは安全圏だよ」

「どこがだよ?警察に追われる毎日だろ?」

「いや、たまに言われるけどこの容姿だからね」

「・・・・・・こ、いつらぁ、よわそぉ、ぬすむ、無理」

「あぁ、なるほどね」

「そうだよ。叔父さん。私達はこの汚染された世界をリセットするために動いている」

「なるほどなぁ。言いたいことは分かった」

「どうする?私達の味方になるか敵になるか」

「ちなみに、そのUSBはどうするつもりだ?」

「USBはしばらく時間が経ったら全世界に公開する」

「後悔はしてないの?」

「全然」

「う〜ん・・・・・・」

「私達を敵と認定したらここで死んでもらう」

「怖ぁ」

「さて、どちらを選択するか聴かせてもらおうかしら」


言ってることが完全に悪役ですが。

う〜ん。

真面目に考察すると、敵対する以外に選択肢は無いんだよ。

でもそれだと多分俺の身が危ない。

そして向こうの味方につくのかと言ったらそうでもない気がするんだよ。

確かに向こうの言っていることは正しい。

今、現に公安のデータを見せてもらっているが確かに暗殺計画がある。

それを踏まえると、こちらの味方につくのが筋のような気がしてくる。

そしてこのデータを世間に公開するというのも間違っていない。

公が目にすれば国家崩壊は免れない。


「なぁ、盗んだ国って何処なんだ?」

「順に、ドイツ、アメリカ、日本、イギリスよ」

「なるほど」


いい国に見えれば見えるほど腐ってるというやつか。

なんか分かる気がするな。


「ちなみに、この暗殺計画は一般市民も対象だよ」

「え?」

「この事実に気づきそうな人を全て」

「ということは――――」

「そう、叔父さんやこの前の子も入ってる」


この前の子って・・・・・・もしかしてサーチエクスペンシブ?

あいつに関しては大丈夫だけど・・・・・・。

でも、依頼しておいて用が終わったら消すのはあまりにも頂けない。

かといって、向こうに味方するのも違う。

ここで俺が選ぶべき選択肢はたった1つだろう。

それは―――――。


「俺はどちらにも関わらないし関わる、それでいいか?」

「・・・・・・中立ってこと?」

「そうだ。ズルいように聴こえるかもしれんが」

「分かった。それが叔父さんの答えだね?」

「あぁ。もちろん中立ってことは洸や泉水にも協力する」

「ありがと。でも、お互いの情報は伏せといてよ」

「そんくらい、分かってる」

「ここが私達の寝場だから、何か言いたいときとかはここに来て。他の理由だったら許さないから」

「他の理由って、具体的には?」

「私達と遊びたいの類。私達だって暇じゃないんだからね。スパイである前に立派な学生でもある」


洸はそう言うと初めて俺に笑顔を見せた。




≪To The Next Story...≫

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