2-2
「なるほど。そういう感じになってんだね」
「紗弥さん。どうにかならないかな」
う〜んと紗弥さんは首を捻ると、何かひらめいたように顔をあげる。
「どうにもならないことはないんだけど」
「その案とは?」
「話す機会を作ればいいんじゃないの?」
「どういうこと?」
「例えば何かの委員会で同じになる、とか」
「俺委員会だけは嫌なんだよね」
「えぇ、主張強。それじゃ、なにかのボランティアとか?」
「利益がないとやりたくないと言うか」
「それ、最悪な考えだと思う」
「かもな。アドバイスありがとう」
「何もアドバイスしてないと思うんだけど?」
紗弥さんに礼を言って教室を後にした。
◆
次の日。
俺はサーチエクスペンシブと一昨日同様、屋上で飯を食うことに。
「収穫はどうだ?」
「僕が調べたところによると、閑華さんと靜枝さんは白っぽい」
あ、そう。
「俺の方の収穫は幸雄さんは白。ホームステイだとよ。一ノ瀬さんはこれから」
「ガンバ」
「絶対にめんどくさいから俺に押し付けたんだろ」
「さぁ?何のことだか」
「この野郎」
サーチエクスペンシブに嫌味を言って、俺は教室に向かう。
教室に入ると、真っ先に俺は一ノ瀬さん達の元へ向かう。
「今、いいかな?」
俺が話しかけると、ビクッと体を震わせて振り向く。
そんなに怯えなくてもいいんじゃねぇか?
「・・・・・・」
「この後、少し話したいことがあるんだけど、いいかな?」
「・・・・・・」
無言だが、今僅かに頷いたのを見逃すはずがなく。
「それじゃ、放課後この教室で」
「・・・・・・」
俺はそう告げると、自分の席に戻る。
そう言えば、紅梨さんはどこに行ったんだ?
あたりを見渡すが、かなりムカつく顔をしているサーチエクスペンシブしかいない。
他のやつはどうせグラウンドか。
いつもなら紅梨さんいるんだけどな。
まぁ、詳しいことは気にしないでおこう。
◆
放課後。
俺はサーチエクスペンシブや紗弥さんに用事があると言って残ることに。
その時のサーチエクスペンシブの顔を殴りたかったが、見事に避けられた。
「待たせたな」
俺は教室に入ると、待たせていた一ノ瀬さん達に謝ると、近くの席に座る。
「いきなりで悪いんだが、4,5日前、何をしていたのかを知りたい」
「・・・・・・」
「勝手に調べて悪いと思っているんだが、イギリスにいたよな?」
「・・・・・・――」
僅かではあるが、何かを喋った。
かなり高い声で。
「別に笑ったり言いふらしたりしないから言ってほしい」
「・・・・・・
「え?」
口を開いたのは席順的に一ノ瀬洸さん。
かなり小さく細い声ではあるが、透き通るように聴こえる。
「・・・・・・ですよね」
「え??え??」
「・・・・・・話がしたいなら家に来てください」
どういうこと?
「・・・・・・み、みてる」
今まで口を開かなかった泉水さんの方が後ろ扉を指す。
振り返ると、そこには隠れていない頭が見えていた。
「了解」
あれはおそらく紅梨さんだろう。
「・・・・・・撒くから付いて来て。泉水」
「付いてきてって・・・・・・」
俺は2人の後を追うように走り出す。
角を曲がった途端、2人は一気に走り出す。
「「えぇぇぇぇ!?」」
俺は急いで後を追う。
後ろからも聴いたことのある声が聞こえた気がする。
ちょ、本当に速いんですけど。
「・・・・・・次の角を左、その次も左。その後右」
洸さんがボソリとつぶやく。
そしてT字路が迫ってくると、左に曲がる。そしてすぐ近くの路地に入ると底を右に曲がる。
そして曲がった先で2人が止まっていた所為でぶつかるところだった。
「速いね・・・・・・」
ゼェハァゼェハァ。
という音を出しながら肩で息をする。
「全力ダッシュ5分はキツイって」
「・・・・・・」
紅梨さんを撒くには確かにこの方法が一番だけれど。
「・・・・・・叔父さん」
「俺のこと?」
2人はうなずく。
確かに再従兄弟叔父かもしれないけどさ。
いや、今度家系図見ておくか。
「それで何?」
「・・・・・・イ、イギリス・・・・・・知りたい、な、なら・・・・・・ゴ、ゴールデン、ウィーク。待ってる」
「え?」
「・・・・・・泉水、無理しないで。今度、狩場帝国ホテルに泊まる。そこに来てください」
「え?」
「・・・・・・上」
上を見ると、そこには除いてる紅梨さんがいる。
あぁ、なんとなく察してしまったのかな。
「・・・・・・そういう・・・・・・ことだから」
そう言うと2人は走って路地を行ってしまった。
紅梨さん、余計なことを。
◆
「はい。反省しています」
紅梨さんの家にて。
紗弥さんと共にお叱り中。
「毎度毎度好奇心しかないんだから・・・・・・。本当に困るねぇ」
「はい」
「『はい』って言ったら許してくれる社会じゃないんだよ!?」
「大変申し訳ございません」
「謝れば許してくれる社会でもないんだよ!?」
「はい」
「大体、閑華さんは――――」
始まった始まった。
俺は部屋の外で待たせてもらうことにしよう。
ただでさえ、紗弥さんは面倒くさいのに怒った時には・・・・・・。
考えるのをやめよう。
そういえば、なんで一ノ瀬さん達は俺のことを知っていたんだ?
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