2章 GWの事実

2-1

「お前らどこへ雲隠れしてたんだよ」

「んと、ちょっとイギリスに」

「は?イギリスってあのイギリス?大使館とかじゃなく?」

「僕のプライベートジェットでちょっとイギリスまで」

「ちょっとそこまでみたいなノリで言うが、そういう距離じゃないんだが」

「僕にとっては世界のどこであっても自分の庭のようなものなんだよね」

「その割には英語が出来てなくてフォローしたのは誰だったか」

「ヴ・・・・・・」


本当に行ってたのかよ、とサードラインは呆然とした目線を向ける。


「そう言えば、安城さんは?」

「あぁ、確か一昨日は休んで昨日も休んでたから・・・・・・」

「風邪か?」

「さぁ?後ろにいる本人に訊いたらどうだ?」


一瞬何言ってんだと思ったが、後ろに気配を感じて恐る恐る振り返るとそこには紅梨さんと紗弥さんが居た。

あ、これマズいやつ。


「どこに行ってたの?」


紗弥さん、逆にその平然さが怖い。


「ちょっとイギリスまで」

「そういう距離じゃないんだよね」

「さっきも同じこと言われたな」

「ちなみに裕志くんたちはどういう用事で?」

「そこに俺らのプライベートは存在するのか?」

「してるわけないですよ」


とその時、始業を知らせるチャイムが鳴り響く。


「お、授業だ。いかなきゃなルーズセル」

「そうだな。サーチエクスペンシブ。授業を真面目に受けよう」

「「「逃げたな(ましたね)」」」


そんな言葉に俺が屈すると思うか?



「それで日本に来たあとの行方がわからないんだよね」

「どういうことだってばよ」


昼休み。

俺とサーチエクスペンシブは生徒会から許可を得て屋上で購買で買った弁当を食べる。


「僕が調べた乗客リストの中に不審人物は居なかった。というか犯行時刻にアリバイが全員ある」

「そうか・・・・・・。ちなみに乗客リストの入手方法は?」

「これだよ」


サーチエクスペンシブは右手の親指と人差指で輪を作る。

はいはい。

航空会社を買収したのね。


「それ、見せて」

「いいよ。僕のスマホに入ってるから」


サーチエクスペンシブはスマホでファイルを開いて俺に渡す。


「イギリス→日本だよな?」

「そうだよ。少し気になるのは知ってる日本人名が多いこと」

「どういうことだ?」

「よく見れば分かる。まず上から順に『安城閑華』『安城靜枝』」

「あの人達イギリス行ってたのかよ」

「次に『一ノ瀬洸』『一ノ瀬泉水』『水無瀬幸雄』」

「本当に何やってんだよ」


俺は半分呆れた。

イギリス行ってたことを半分以上叱ってたやつが行ってんじゃねぇか。


「取り敢えず、この5人は保安局周辺に居たな」

「他の人はどうなんだ?」

「別のところでアリバイがある」

「おいおい、容疑者ほとんど全員身内かよ」

「そうだね」

「これは1人ずつ確認する必要がありそうだな」

「それもそうなんだけど、もしかしたらイギリスにまだ居る可能性は否定できない」

「なんで?」

「今まで情報暗殺者はそのまま海外逃亡なんてしてこなかった」

「フェイントの可能性もあるということか」

「流石ルーズセル」


サーチエクスペンシブは弁当の玉子焼きを口の中に入れる。


「それぞれに事情を訊いて何もなかったらイギリスにいる判断でいいんだな?」

「そうだね。他の人はその時間帯に目撃情報があった」

「なるほど。それでどうすれば言い訳?」

「そこなんだよね・・・・・・。僕が安城さん達に訊く」

「幸雄さんは俺から」

「一ノ瀬さんたちはルーズセル、よろ」

「は?」

「いや、僕の直感的にあの2人、ルーズセルなら行ける」

「それは喜んでいいの?」

「あの2人、ルーズセルのこと気にしてるからな」

「そうなの?」

「うん。意外と。気づかなかった?」

「全く」

「この鈍感め」



俺は放課後、水無瀬の家へと向かっていた。

幸雄さんに連絡を入れたところ、≪俺はいつだってサボり魔だ≫と帰ってきた。

高校くらい行けよ。

あ、いや今年から大学か。

俺がチャイムを鳴らすと、幸雄さんが出迎えてくれる。


「よう。久しぶりだな」

「そうですね。と言っても3月下旬に1回集まりましたけどね」

「そうだったな」


俺は幸雄さんに案内されて居間に上がる。


「んで?俺に用事なんて珍しいな」

「えぇ。少し大事な用事で」

「で、要件は?」

「幸雄さん、先日にイギリスに行きましたよね?」

「ん?あぁ」

「どうして行ったのか教えてくれませんか?」

「んなことか?俺はあの時ホームステイに行ってた」

「え?んなことするの?」

「英語は後々必要だと思ってな」

「へ、へぇ。幸雄さんでもそんなことするんだな」

「俺、今すごい罵倒された気がするんだけど」

「気のせいですよ」

「そうか。気のせいだよな」


幸雄さんは白っぽいな。

幸雄さんにお礼を行って水無瀬家を後にする。

さて。

俺には一番の難題が待ち受けていた。

一ノ瀬さん達に訊くことである。

どうやって話しかけようから始まって、その後話しが続くとも思えない。

かと言って無理やり話すのも良くないからなぁ。

ここは1つ、紗弥さんに少し助けを求めよう。

本当は紅梨さんに頼みたいところではあるんだけど、容疑者の1人だからな・・・・・・。

水無瀬に頼む手もあるんだけど・・・・・・。

まぁ、紗弥さんでいいか。

一応信用できるし。




≪To The Next Story...≫

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