1-5

軽い自己紹介と世間話を終わらせて、本題に入ることにした。


「それで、本題に入りますが。宜しいですか?」

「勿論です」

「USBの話は聴きましたか?」

「はい。サーチ・・・・・・じゃなくて、秋田から」

「いいですよ。いつもの呼び方で」

「では、サーチエクスペンシブの方から聞いてます」

「そのことなんですが、どう考えてもを抜けるのは無理があると思いまして」

「どういうセキリュティなんですか?」

「まず、重量センサーですね。入ったときと出たときの重さが違うと反応します。次に、赤外線センサーですね。これも網目状に張り巡らされています」

「それを聞いた時点で僕だったら無理だね」

「それから、パスワードを入れなければいけないんです」

「そのパスワードとは?」

「あまり大きな声では言えないんですが・・・・・・0oZ2kl-sk7@Koanです」

「複雑・・・・・・だな。書いてあってもわからないぞ。最初のところは」

「そうだな。ルーズセル。ゼロとo小文字のオーとかむずいだろ」


その時、喫茶店の入り口が開いた。

振り返ると、そこには紗弥さんたち一味が居た。

また面倒なことに・・・・・・。


「――――では後日改めて」


そう言って永山さんは帽子を被って紗弥さんたちとすれ違って出ていった。


「あ、居た。全く。どこに行ったのかと思ったら」

「紗弥さん、そこまで怒ることはないでしょう?」

「閑華さんも甘いんだよ。大体」


なるほど。

永山さんは紅梨さん達を知っていたのか。


「ルーズセル。また後で話が」

「ok」

「――――って後ろに座ってんの一ノ瀬さんじゃん。偶然だね」


え?

数時間前にあなた、容易に話しかけた紅梨さんを叱ってましたよね。

あぁ、なるほど?

喫茶店の席で話しかけられると逃げ場がないのか。

教室だと逃げ場がいくらでもあるけど。

他の人もいるし。


「・・・・・・」

「どうしてここに?家が近いとか?」

「・・・・・・」

「あ、そういえばさ。この前ウチの閑華さんがすいませんね」

「・・・・・・」

「私は西条寺紗弥。紗弥で良いよ」

「・・・・・・」


ヤバい。

音声だけ聴くと一人で喋ってるヤバい人だよ。

笑うレベルだって。

しかも紗弥さんガン無視されてるし。

これは流石に紗弥さん可愛そう。

いや、これは紗弥さんが悪いか。


「・・・・・・!」


そして黙って一ノ瀬さんが紗弥さんのみぞおちに拳を入れた。


「ゴフア!?」


そして2人の一ノ瀬さんは小走りに出口の方に向かって行った。


「・・・・・・紗弥さん、大丈夫ですか?」

「ダイジョウブジャナイ」

「え?」

「いや、強!?何あれ。雲雀ぃでももう少しマシだったよぉ!?」


半分涙目の紗弥さんは駄々こねる子供のように語る。


「紗弥さん、先程自分で時と場合を考えろって言ってませんでした?」

「うるさい」


紅梨さんの言葉を遮ると、紗弥さんは再び駄々こねる。


「埒が明かないから行こうか」

「だな。ルーズセル。僕の車で待っててくれ」

「了解」



「――――ったく、邪魔が入りやがった」

「こころお嬢様、先程永山様から連絡がありました」

「なんて?」

「後日、そちらに参ります。とのことです」

「なるほど。ウチに来る・・・・・・」

「どうした?」

「ん〜とね・・・・・・その・・・・・・」

「お嬢様は片付けが苦手です。故に応接間の荒れ具合が半端ではないのです」

「咲希!!」

「はい?何でございましょう」

「余計なことを喋らずに運転に集中しなさい」

「畏まりました」


ふぅ、と一息付いてサーチエクスペンシブはこっちを向く。


「で、部屋が汚いだの何だの」

「それは言葉の綾というものですね」

「片付ける気はあるんですか?」

「ないです」

「はっきり言わないで。で、どうするの?」

「どうするって・・・・・・」

「片付ける他ありませんよね?」

「・・・・・・咲希〜!!助けて〜!!」

「(先程余計なことを喋らず運転しろと言ったのは誰だか・・・・・・)」


その独り言は俺の地獄耳には届いた。

たしかにそのとおりだよ。

咲希さんは喋る素振りはなく、スピードを上げた。



「少々、こちらでお待ち下さい」


俺は咲希さんに案内されて、秋田家の一角で待たされることに。

その間に、サーチエクスペンシブと咲希さんは早足で奥の方に進んでいった。

そのすぐ後に、ドンガラガッシャンだとか、何かが破壊する音が聞こえたが、

気の所為ということにしておこう。


「おまたせ・・・・・・ルーズセル」


俺はサーチエクスペンシブに連れられて、応接間へ向かった。


「うん。綺麗だね。陶器の破片が散乱していること以外は」

「ヴ・・・・・・」

「他にもなんか椅子の残骸のようなものがある」

「考察すんな。悲しくなる」

「はいはい。で、何だって?」

「あぁ、USBの件ね」

「そうそう」


サーチエクスペンシブはスマホを取り出すと、俺に見せてくれる。


「これは・・・・・・」

「御名答。監視カメラが捉えた画像によると、2人組の犯行」

「逃走経路とかは?」

「分からない。防犯システムが全てオフにされてたから」

「どういうこと?」

「セキリュティ―ルームに侵入があったんじゃないかな、と僕は思う」

「なるほどね。でも、映ってるってことは・・・・・・」

「そう、そこがわからないんだよ。普通なら映る真似なんてしないと思う」

「だけど、今回は写っていた。もしくはわざと写った」

「僕が考えてることとだいたい同じ。だけど、わざと写ったっていう発想はなかったな」


その時、玄関からの意外な来客を知らせるチャイムが鳴り響いた。




≪To The Next Story...≫

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