1-4

あの話があった数日後。

俺と紅梨さんは放課後、理科室まで駆り出されていた。

元はと言えば、サーチエクスペンシブがそこまで全員分のノートを運ぶ予定だった。

押し付けである。


「さて、教室に戻りますか」


紅梨さんは嫌がらずに押し付けられていた。

その時の笑顔が怖かったけど。

後でサーチエクスペンシブがどうなっても知らない。


「教室に戻ったら戸締まりして図書館に行きましょうか」

「そうだね」


そんな話をしながら教室に入る。

中には何処となく侵入したサードラインと水無瀬、それから紗弥さんが居た。


「来たか。ルーズセル」

「来たかって・・・・・・。テメーが全て押し付けたんだろうが!?それでもって何だ!?」

「落ち着けルーズセル。サーチエクスペンシブはそういう奴だ。気にしたら負け」


そうだった。

気にしたら負け、気にしたら負け。

よし。


「よし。戸締まりして帰るか」

「切り替え速!?」


ありがとうサードライン。

サーチエクスペンシブに一矢報いた気がする。


「ちなみに閉めるなら待ったほうがいいよ」

「へ?」

「まだ人がいるから」


水無瀬は自分の後ろを指す。

あの席は・・・・・・。

出席番号2と3。

確か名前は一ノ瀬さん。

双子らしい。

噂では2人共全く話さないことで有名だ。

あと、銀髪も目立つ。

他にも成績で言えば、学年トップ2を独占する。

今は2人でスマホをいじっている。


「・・・・・・どうすればいいと思う?」

「・・・・・・私が少し話してきます」

「「「「「絶対無理だと思う」」」」」

「私、そんなに信用ないですか?」

「そういう問題じゃないと思う」

「任せてくださいよ」


紅梨さんは自信満々に言って向かって行った。



結果から言うと、無理だった。

話しかけようとした瞬間に2人共カバンを持って逃げ出してしまった。

そしてサーチエクスペンシブの家で反省会。


「はい。私が悪かったです。大変申し訳ございませんでした」

「分かってくれれば・・・・・・」

「具体的にはどう反省してるのかな〜?」

「グ・・・・・・」


水無瀬が宥めるが、紗弥さんの猛攻は続く。

もしかしてまだ心を読める?

だとしたら大分マズいぞ?


「今、失礼なことを考えた人が数人いるようだね?」


読めてないけど読めてるみたいで。

元気そうで何より。


「取り敢えず謝っときゃ済む世界じゃないのよ。分かる!?」

「はい・・・・・・」


紗弥さん、本気モードですね・・・・・・。


「俺たち、向こうにいるから終わったら呼んで」


サードラインがそう言うと、俺らはその部屋を後にする。


「・・・・・・失礼致します。こころお嬢様」

「「ウオッ!?」」

「ん?どうした、咲希」


俺とサードラインは後ろからの声に驚く。

そこには俺らと同い年くらいの近侍さんが居た。

忘れてたけど、コイツ令嬢だった。


「先程、公安の方から急ぎで何処かで会えないか、とのことでした」

「急ぎか・・・・・・。なら、何処が都合がいいか聞いてくれ。

 そこで会おう。車を回しておいてくれ」

「畏まりました」


話が終わったサーチエクスペンシブはこちらを振り返ると俺にアイコンタクトを送ってきた。

はいはい。


「んじゃ、俺はトイレに」

「・・・・・・オッケ。いってらっしゃい」


サーチエクスペンシブは勘付いたのか「んじゃ、正面攻めで」とわかりやすいことを言っていた。

少しは隠す努力しろよ。

国家機密どころか、お前がバラすやつだろ。



「で、何処に行くんだ?」


俺は車に乗るとサーチエクスペンシブに問う。


「その前に咲希、撒いてくれないか?」

「え?」

「ルーズセル、気づかないのか?追手がいることを」


確かに言われてみれば。

車が1台、追ってきている。


「畏まりました」

「咲希さん、運転もできるんだな」

「だろ?彼女、私が一番信頼している人だからな。18になって運転ができるようになって良かった。これでもう困らない」

「お言葉ですがこころお嬢様。でございます」

「そうだね。腕は確かだからね。それじゃ、頼むよ。ルーズセル、何処かに掴まれ」

「はいは―――――」


高速道路に入って、返事をし終わる前に急加速が始まる。


「ルーズセル、先に話をしておこうか。確実に今回はスパイが入った」

「んと、最初からお願い」


よくもまぁ、こんな淡々と話せますね。

渋滞じゃなくて良かった・・・・・・のかな?


「公安の長官、永山修三。それで公安の全データが入っている1024TBテラバイトのUSBが消滅したんだと」

「ほう。そのUSBは何処に保管されてたんだ?」

「金庫。それも僕らが知っているようなやつではない」

「どういうやつ?」

「最新鋭技術の進歩」

「何言ってんだ」

「本当だよ」


言ったのお前だろうが。



到着したのは喫茶店。


「咲希、ここで会うことになってんだよな?」

「はい。間違いは御座いません」

「それじゃ、車で待機しててくれ」

「畏まりました」


サーチエクスペンシブは咲希さんを車に残すと、俺を連れて喫茶店の中に入る。


「なぁ、サーチエクスペンシブ。こんな公の場で話していいのか?」

「言い訳がないだろう?」

「だったら場所を変えて・・・・・・」

「そう思う裏を掻く。即ち、こんなところでは話さないという偏見に漬け込む」

「なるほど?」

「そして、この人が話に出てきた永山修三さんだ」

「宜しくおねがいします」


角の席に到着して立ち上がった男性は立ち上がってお辞儀をした。




≪To The Next Story...≫

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