1-3
「フフ、何ですか?」
言葉を失ってしまった。
「ちゃんと、するべきことをするんですよ」
「お、おう。分かったからサーチエクスペンシブを解放してやってくれ」
「分かりました」
「グヘッ」
サーチエクスペンシブは紅梨さんが力を弱めると同時に床に崩れ落ちる。
「ルーズセルー!!!!痛かったよぉぉ・・・・・・!!!!」
「お前が例の話をしてくるのが悪いだろ。大体俺も怒られたし・・・・・・」
「それは僕のせいではないだろ」
「ウッ・・・・・・そう・・・・・・かもしれない」
これは話を長引かせると、完全に論破され兼ねない。
撤退しか道は残されてない。
だから、俺はサードラインが立ってると思われる廊下に行く。
「おう、サードライン」
「お、ようやく来たか」
「サーチエクスペンシブが珍しく泣いたから来た」
実際の理由は違うけど。
命の危険を感じたからなんだけどね。
「まぁ、中から叫び声が聞こえたから違うということだけは分かった」
「・・・・・・」
分かったなら訊くなよ。
毎度思うんだけど、サードラインって意外とハメてくるからな。
「どうした、そんな顔して。俺は事実を言ったままじゃないか」
「―――そろそろ殴るよ?」
「ヤメテ。それだけは痛いからやだ」
理由雑すぎ。
ま、俺的には見破りやすいほうが良いと思うけどな。
楽だから。
「・・・・・・あの」
俺とサードラインが口論をしていると、前から声が聴こえた。
「あ、はい。何でしょう」
そこにはキリッとした少年が立っていた。
イ、イケメン・・・・・・。
いかん。
魅了してしまう。
サードラインも同じように見入ってる。
「あ、あぁ。どうぞ中に」
なんとか正気に戻して言う。
サードラインは俺のことなんか気にせずに中に入るのを目で追っていた。
◆
「奥山純一。12歳です。推理同好会に興味があったので入学しました」
「ほう。この部活に」
「はい」
奥山はそう言うと、俺のことを見た。
イケメ――――、コホン。
気にしたら負けだ。
うん。
「実を言うと、水無瀬先輩に恩があるものでして」
「わたくしに、ですか?」
「はい。前に僕の一家を助けてくれたことがありましたよね」
「・・・・・・・・・・・・?」
「ご存知ないですか?2年前に冤罪をかけられた時に・・・・・・」
「もしかして、あの大阪での出来事?」
「そうですそうです。分かっていただいて光栄です」
奥山はまた来ます、と言って出ていった。
その格好も優雅だった。
「水無瀬、大阪での事件って?」
「あぁ、詳しく話すと長くなるんだけどね―――」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2年前―――。
わたくしが大阪にパーティーに招待されて行ったとき、あるホテルに泊まったの。
わたくしと兄貴と両親が泊まったのは1709号室。
パーティーの主催者が1507号室、その他参加者もこのホテルに全員泊まっていた。
そんな時、ある殺人事件が起こった。
内容を要約すると、密室殺人に近い状況でベランダから主催者が落下して転落死した事件。
落下時刻は21時43分。
警察は真っ先に真上の1607号室に泊まっていたあの奥山くん達を睨んだ。
アリバイもないし落下位置的にその可能性が高いと。
真下の1407号室の新庄さんは21時45分頃までバーで飲んでいた。
目撃証言もあったと。
だけど、わたくしが奥山さんの部屋に行った時に違和感が生まれた。
転落死したはずの主催者がもし、この場所から落下したならビル風の影響でかなり軌道が変わるのではないかと。
わたくしが立てた仮説はこうだ。
なにかの仕掛けが作動して落ちたのではないかと。
まぁ、操作の話は今はカットさせてもらうけど結果的に言えば1407号室に居た新庄さんが時間経過で落下するピアノ線を使用したトリックを使った。
そのピアノ線は被害者のそばに落ちていたからすぐに分かった。
そして冤罪は晴れたと。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「まぁ、こんなところ。ざっと言うとね」
「・・・・・・あぁ、あの事件のことですね・・・・・・」
「おい、知ってる口調で言うな」
サードライン、お前が言うのに無理はない。
俺も同じことを言おうとしていたから。
「いえ、知っているものは知っているので」
「あ、そう?」
「なぜなら、私も参加していたからですよ」
「は?」
「唯一、私が水無瀬さんに勝てなかった事件ですから。忘れはしません」
「へ、へぇ。そ、そうなんだ」
当の本人がビビってんじゃねぇか。
多分水無瀬は、まさか世紀の名探偵に勝った
気絶しそうな勢いだし。
「んなことより、サーチエクスペンシブ、さっきの話だけどよ」
俺はふと思い出してサーチエクスペンシブの方を向き直る。
「あれな。結構深刻な内容だから外で話そう。中には聞き耳を立てている人が何人もいるし」
うん。
そのとおりです。
水無瀬、紅梨さんに紗弥さん、サードラインだな。
「して、どんな内容だ?」
「日本の公安の情報が漏れているとか漏れていないとか」
「公安・・・・・・」
「うん。僕はあんまり関わりたくないんだけど、なにせ相談された人が・・・・・・」
「誰だったんだ?」
「えっと、公安のトップ」
おっと、これまた急な展開だな。
ブラック・キャットを倒したばかりだと言うのに。
「んで?どうするんだ?」
「ルーズセルに頼む以外に選択肢はない」
「ですよね」
その会話を影で聞いている人がいるなんてことはこの時の俺には想像も付かなかった。
≪To The Next Story...≫
〜作者あとがき〜
執筆が間に合いそうなので、しばらくは毎日更新します。
宜しくおねがいします。
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